シナリオ外の黒聖騎士(ブラックパラディン)

猫之

前日譚・はじまりの夜

プロローグ

 それは、中学を卒業して間もない頃。


 オレは何をしでかすかわからない【自称・義姉あね】を探して、村のはずれにある丘の麓にある神社へ走った。


 一年ほど前に、その神社でオレが拾ってきた、素性もわからない謎ばかりの金髪の彼女。


 やたらゲームが好きで、時間があればずっと同じオンラインRPGゲームをやりこんでいた。


 最初は世間知らずの、胡散臭さ全開の彼女だった。


 けれど、十数日前に突然村に現れて立て籠った強盗殺人犯に、唯一の親族である祖父を殺され、消沈しているオレを優しく包み込んでくれた。


 そして、「私を義姉と呼んで」と言い出したのだ。

「家族になってあげる」と。


 

 その義姉が、今朝になって前触れもなく消えた。


 当てもなく思いつきで神社に向かったオレは、社の後ろに回ろうとして小石に躓いて穴に落ちた。


 眩い光の空間に目を閉じ、そこを抜けたかと思うと、地面にたどり着いた感触が尻にあった。


 そして閉じていた目を再び開くと、そこは戦場だった。


 中世の鎧を纏った兵士達が、剣を手にぶつかりあっている。

 時々舞い上がる炎は……魔法?


 急にあたりが暗くなった。


 影?

 見上げると兵士の一人が剣を振り上げ、それをオレに振り下ろそうとしていた。

 ヤバい!


 手には何もない。

 どうする?

 訳もわからないまま、オレは拒絶するように手を横に振った。


 アッチへいけ!と。


 瞬間、兵士が光に包まれて消えた。

 そして、周囲にいた同じ鎧を纏った兵士達が同心円状に消えていく。


「……えっ?」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 ごめんなさい。


 軽々しく別世界に行ってごめんなさい。


 調子にのって、貴方を【義弟おとうと】なんて呼んでごめんなさい。

 お陰で妙な【称号】を与えて、巻き込んでしまってごめんなさい。


 でも、ごめんなさい。

 頼れるのは、貴方だけなの。


 本当に……ごめんなさい。

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