異世界ファンタジー部 0

渋谷かな

第1話 0-1 皇女3才の過去

「スズ。あなたは皇女なのよ。」

「アハッ!」

 皇女様は皇族である鈴木宮家の娘として幸せに生まれる。

 しかし悲劇が起こる。


「ギャアアアアアアー!」

 皇女様の父親が悲鳴を上げて死に倒れる。

「お茶に毒が!? スズ! 飲まないで! ギャアアアアアアー!」

 皇女様の母親が悲鳴を下げて崩れ死ぬ。

「お父さん!? お母さん!? イヤアアアアアアー!!!!!!!」

 皇女様3才の出来事であった。


「邪魔者の天皇もいなくなりましたな。これで皇族はほぼ排除できました。」

 闇の中で会話する大人たち。

「私たちの言うことを聞いていれば長生きできたものを。」

 こいつらが共謀して鈴木宮天皇と皇后を殺害したのである。

「鈴木宮の跡取りはまだ小さい小娘一人。我々の思う通りに操れるお人形。」

 これが現在の皇女様である。

「これで日本国家は我々の思うがまま。オッホッホー!」

 一番悪い黒幕は女であった。まあ、異世界ファンタジー部のシリーズ1から読んでくれている人には簡単に黒幕が推測できてしまう。


(お父様とお母様がいない・・・・・・。)

 皇女様は幸せから絶望に一瞬で落とされ涙も枯れ呆然としている。

「大丈夫ですか? 皇女様。」

 そこに宮内庁の偉い人がやってくる。

「・・・・・・。」

 しかし悲しみに包まれている皇女様は反応しない。

「さあ。皇女様には天皇代理として国事を行なっていただきます。」

 宮内庁は従わない皇族を皆殺しにしてきた。残されたのはスズ皇女だけであった。

「え? 私がお父様の代わりに?」

「そうです。お父様の分まで頑張りましょう。私たちが全力でサポートします。」

「あ、ありがとう。」

 少し緊張がほぐれる皇女様。

「世間知らずの皇族の子供の扱いなど簡単だ。優しく笑ってやれば簡単に人を信じるのだから。」

 宮内庁長官の独り言である。

「な、なにか言いましたか?」

「いいえ。何も。」

 本当は皇女様には聞こえていたのだろうか、微妙な所である。

「さあ、皇女様。今から食事をしましょう。ハンバーガーはいかがですか? おまけにポテトもつけますよ。ドリンクはオレンジジュースでよろしいでしょうか?」

「お肉はミディアムで、ポテトはシャカシャカにして、ドリンクはコーラ一択!」

 皇女様も両親のうるさい躾から解放されて自分の意見を言い出した。

(ぬぬぬぬぬっ!? やはり小さくても皇族!? なんて我儘なんだ!?)

 宮内庁長官の・・・・・・宮内ミヤは3才の皇女様に驚愕した。

「か、かしこまりました。」

(まあ、初日ぐらいはいいだろう。これから自分の意見など言えない操り人形にしてやる!)

 ミヤは恐ろしい男であった。


「おいしい!」

 ハンバーガーを子供の様に頬張る皇女様はまだ地獄というものを知らなかった。

 


「私は皇女! 私は偉い! お父様やお母様の様に国を治めるのだ! ワッハッハー!」

 皇女様3才は意気揚々としていた。

「おはようございます。皇女様。」

 そこに宮内庁の長官の宮内ミヤが現れる。

「おはよう! ミヤ! 私は何をすればいいの?」

「はい。皇女様には公務として書類にサインをお願い致します。」

 ミヤは大量の書類を差し出す。

「多っ!?」

「これが終わりましたら、おやつの時間です。」

「がんばります!」

 皇女様はおやつという言葉に弱かった。

「うおおおおおー!」

 皇女様は高速で書類にサインをしまくった。書類の中身を確認することなく。

(フォフォフォー! 皇女がバカなガキで良かったわ! 自分が何にサインしているのかも分からないとは!)

 ミヤは心の中で笑っていた。

「できた! できたわ! ミヤ! お菓子ちょうだい!」

 おやつのためならとサインしまくった皇女様。

「よくがんばりましたね。どうぞ。皇女様のためにチョコ2倍にしておきました。」

「私のため! チョコ2倍! やったー!」

(チョロイ! 所詮はガキだな! フォフォフォー!)

 相手に特別意識を持たせ優越感を与え自由に操る方法である。


「これは皇女様の命令である! 日本国は全世界に侵略戦争を行う! これは日本国皇女様の命令であるぞ!」

 ミヤはネットで日本の公務員たちに皇女様の署名入りの書類を見せつける。


「チョコ美味しい。今度はポテチがいいな。アハッ!」

 この時、皇女様は自分が何に署名したのか知る由もなかった。

 


「美味しい! やっぱり皇女は黙ってメロンソーダね! アハッ!」

 皇女様3才はバカ丸出しでおやつタイムを過ごしていた。

「臨時ニュースです! 日本が世界各国に宣戦布告しました!」

 臨時ニュースが流される。

「え? ええー!?」

 手に持ったクリームソーダを思わず落としてしまう。

「皇女様。何を驚かれますか?」

 そこにミヤが現れる。

「せ、戦争ってどういうこと!?」

「署名なさったではありませんか。皇女様が。」

「あっ!?」

 皇女様3才はお菓子に釣られて文章の中身も見ないで書類にサインしまくったのである。

「ありがとうございました。皇女様。敗戦国の日本にとって開戦は悲願! 世界を! 地球を! 日本の物にする時が来たのだ! ワッハッハー!」

 ミヤたち悪い日本人は機会を伺っていたのであった。

「そんな!? 私の性で戦争が始まってしまったの!?」

 ショックを受ける皇女様3才であった。


「人型!? 人型ロボットだと!? いったいどこの国が開発したんだ!? ギャアアアアアアー!」

 世界の軍事基地、主要な政府施設が無人AIジャパロボに占拠されていく。

「あんな数機のロボットなど数で押し込め! 戦車でミサイルをお見舞いしろ!」

 世界の軍はジャパロボを迎撃しようとした。


ドカーン!


 戦車の砲撃がジャパロボに命中し破壊した。次の瞬間、大爆発と共にきのこ雲ができた。

「これは核!?」

 一瞬で都市が一つ消滅した世界の人々は、その光景に恐怖した。

「ワッハッハー! ワッハッハー! ジャパロボのエネルギー源は、福島原発から取り出した核エネルギーだ! 今まで日本を敗戦国だの、ポチだのとバカにしてきた者ども! その命で悔いるがいい! ワッハッハー!」

 世界征服の指揮を執る自衛隊の幕僚長のバク。

「こちらは一切攻撃ができないというのか!?」

「核だぞ!? 核!? どうすることもできない!?」

 世界の戦意は核爆弾の前に戦意を失っていった。

「参りました。」

「降伏します。無条件です。」

 世界の格国は白旗を掲げた。

「いったいどこの国のロボットなんだ!?」

「いや!? 宇宙人の仕業かもしれないぞ!?」

 侵略ロボットの正体が憶測を呼ぶ。

「全世界は私が支配します。」

 その時、全世界に向けて向けて全世界征服放送が行われようとしていた。


「はあ・・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・。」

 世界征服宣言を終えた皇女様は呼吸困難に見舞われて四つん這いで苦しんでいた。

「パチパチパチ! よく言えました。皇女様。後でペロリンキャンディーをあげましょう。ワッハッハー!」

 銃を皇女に押し付け無理やり原稿を読ませた宮内庁長官のミヤは大喜び。

「これで世界は日本の物だ! いや! 私のモノだ! ワッハッハー!」

 ミヤは私利私欲にのまれていた。

「はあ・・・・・・はあ・・・・・・。」

(悪魔だ! 悪魔に違いない! この人間の心には悪魔が住んでいるんだわ!)

 皇女様には大人は悪魔に見えたのだった。

「そろそろ来ますよ。世界からの反撃が。でも無駄な抵抗ですけどね。ワッハッハー!」

 ミヤの計画通り順調に物事は進んでいた。


「日本だと!? ふざけるな! あんな小国が!? 核には核だ! ポチっとな!」

 世界各国の核保有国が核爆弾のミサイルの発射ボタンを押した。


ズドーン!


 世界各国から核ミサイルが日本に向けて放たれた。

「甘いな。無人ドローンを迎撃に向かわせろ!」

 自衛隊の総司令官の幕僚バクが迎撃命令を発する。


ドカーン!


 無人ドローンが海上で核ミサイルに命中し爆発させ日本への直撃を防ぐ。

「だが! 核爆発の放射能が日本を襲うのだ! ワッハッハー!」

 世界各国は日本の滅亡を確信した。

「ワッハッハー! ワッハッハー! 甘いな! 世界!」

 しかし日本は滅んでいなかった。

「なぜだ!? 確かに日本が放射能で包まれたのは衛星で確認したぞ!?」

 核爆発で日本は放射能塗れだった。

「な、なんだ!? 日本を覆っていた放射能が消えていくだと!? バカな!?」

 しかし日本上空の放射能は消えていく。

「ワッハッハー! ワッハッハー! ワッハッハー! やっぱり甘いな! 日本は独自に開発したのだよ! 放射能除去装置を!」

 日本のタイキン工業が放射能除去装置イスカンタルの開発に成功したのであった。

「戦争を仕掛けるには、相手の反撃に対する対応も考えているに決まっているだろうが! ワッハッハー! ワッハッハー!」

 世界征服を成し遂げた軍トップのバクの笑い声が響き渡る。



「私、日本の皇女はシン・日本帝国の建国を宣言します!」

 脅されて言わされている皇女様。


「それではシン・日本帝国の世界制圧を始めようか。あの方のために。」

 自衛隊幕僚長のバクがポチっとボタンを押す。


ドカーン!


 世界中の核爆弾基地にジャパロボが突撃して爆発する。

「そんな!? 私たちは降伏したのに!?」

 世界中の人々は既に日本に降伏していた。

「降伏? そんなもの知るか! 今まで敗戦国として味わってきた屈辱に比べれば! 核を制するものが世界を制するのだ! ワッハッハー!」

 恨みからバクには情けはなかった。


ドカーン!


「無人ロボットの電波を無効化しろ! そうすれば動けなくはずだ!」

 ジャパロボの動きを止めようと各国の防衛は動いた。

「なぜだ!? なぜロボットは止まらないんだ!?」

 しかしジャパロボは電波を遮断しても止まらなかった。

「バカか? ジャパロボは無人ドローンのように電波で飛ばしているんじゃない! AIがパイロットとして乗り込んでいるのだ! 電波を遮断して無駄だ! ワッハッハー!」

 恐るべし、人工知能搭載ロボット兵器。


ドカーン!


「ギャアアアアアアー!」

 世界中の核ミサイルの90パーセント以上は破壊された。

「放射能から助かりたければ、放射能除去装置を買うんだな! 弱いと思っていた者に攻められて、更に侵略した者に助けを請うために頭を下げるのだ! ワッハッハー!」

 バクの笑い声が響き渡る。


「臨時ニュースです! 国会でシン・日本帝国の建国が満場一致で成立しました!」

 もちろん反対した議員は殺されている。

「全てはあのお方のために。」

 内閣総理大臣ナイ。


「それでは国内の反乱分子の掃除でも始めるか。」

 ここは警視庁。

「歯向かう者は撃ち殺せ! 発砲を許可する! ワッハッハー!」

 警視総監のケイ。

「あのお方のために!」

 これは全て3才の皇女様の署名から始まった悲劇であった。


「こ、これは何!?」

 皇女様は幼いが気づいていしまった。

「全て皇女様の指示通りです。私たちは皇女様の命令に従っただけですから。ワッハッハー!」

 愉快に笑いながら去っていくミヤ。


「キャアアアアアアー!」

 警察官にピストルで撃たれて死ぬ日本の人々。


ドカーン!

 世界各地で戦争が起こり弱い人々は巻き込まれて何の抵抗もできずに神だけを信じて死んでいく。


「私じゃない!? 私は何も知らない!? 私は悪くない!? そうよ! 私のせいじゃないわ!」

 全ては皇女様の署名から人々の死が始まったことに。

「うおおおおおー! ゲホゲホッ!?」

 皇女様は発狂と吐き気に襲われ苦しんだ。

「私はこんな世界を望んでいない!? なんて気持ちの悪い!? 可愛そうな私!?」

 皇女様の精神がおかしくなり始めた。


ピキーン!


「そうよ! これは私が起こした出来事じゃないわ! もう一人の私が引き起こした惨劇よ! アハッ!」

 皇女様は自己嫌悪から現実逃避を始めた。


(その通りだ。これはおまえが引き起こしたのではない。)


 その時、皇女様の心に誰かの声が聞こえる。

「声? 誰もいないのに? あなたは誰?」

 周りを見回せしても誰もいない。

(私はもう一人のおまえだ。おまえは何も悪くない。)

「そうよ! その通りよ! 私は何も悪くない! アハッ!」

 謎の声は皇女様を肯定する。

「さすが! もう一人の私ね! ありがとう!」

(こちらこそ。おまえのおかげで私は生まれることができたのだから。)

 もう一人の皇女様の誕生である。

「私はスズ。あなたのことは何て呼べばいいのかしら?」

(私の名前はシュベルト。深い暗闇の世界にいる。スズが私を呼び寄せてくれた。ありがとう。)

 謎の存在、もう一人のスズこと、シュベルト。

(安心しろ。これからは私がおまえを守ろう。おまえの望みを叶えてやろう。おまえは私で、私はおまえなのだから。)

「ありがとう。この世界で私のお友達はあなただけよ。シュベルト。」

 皇女様はシュベルトに寄り添う。

「zzz。」

 疲れ果てた皇女様は両親を亡くして以来、初めて安心して眠りに着いたのであった。


「皇女様。大丈夫ですか? 私は東京都知事の大池百合子です。私に力があればクーデター分子を退治するのですが・・・・・・ウルウル。皇女様。いつか必ず救ってあげますからね。」

 東京都知事が皇女様に謁見に来た。

「ありがとう。東京都知事。世界は私を悪の象徴だの、悪魔だの、邪神だの、魔王だと悪口を言っている。私に優しい言葉をかけてくれるのはあなただけよ。」

 皇女様は表面上優しかった東京都知事を信頼した。


「ミヤ。」

「はい。あのお方様。」

 東京都知事はミヤの主だった。

「開戦の責任と世界中の人々の恨みは皇女に押し付けた。もう皇女は用済みよ。他の皇族と同じように消してしまいなさい。」

「かしこまりました。あのお方様。」

 東京都知事は皇女抹殺命令を出した。

「皇女亡きあと、私がシン・日本帝国の皇帝として全世界を支配するのです! 悪の皇女を倒した私は全世界の人々から感謝されながら支配できるのだ! 私が一番偉くなるのだ! ワッハッハー!」

 東京都知事の悲願の世界征服計画であった。


「ということで。あのお方の命令です。死んでください。皇女様。」

 ミヤが拳銃で皇女様の額を狙っている。

「キャア!? やめて!? 撃たないで!?」

 命乞いする皇女様。

「さようなら。」


バン!


 ミヤの撃った拳銃の弾が皇女様の額を撃ち抜いた。

「生きていても可愛そうなだけだ。お父さんとお母さんの元に行けて幸せでしょう。」

 ミヤは去っていった。


(スズ・・・・・・スズ・・・・・・。)

 誰かが皇女様を呼んでいる。

「あれ? ここはどこ? 私は殺されたはずじゃあ!?」

 床に冷たく寝ていた皇女様の意識が戻った。

(スズ、おまえは死んでいない。)

「シュベルト!?」

 声の主はシュベルトだった。

(私が憑いているのだ。撃たれたぐらいでは死ねないのだ。)

「あなたってすごいのね。いったい何者なの?」

(私は魔王。魔界の魔王だ。)

「魔王!?」

 シュベルトの正体は魔王だった。

(おまえの両親を殺された恨みとおまえ自身の精神の崩壊を招いた世界への絶望が私を呼び出したのだ。さあ、願いを言え。おまえの望みを叶えてやろう。)

「私の願い? そうね・・・・・・私の願いは・・・・・・この世界の滅亡! 殺されたお父さんとお母さんの仇を討ちたい! 私は何も悪くないのに、私を恨んだ世界中の人々への復讐よ! こんな世界は滅んでしまえばいい!」

 皇女様は自尊心が強かった。そして自分を傷つけた者どもへの恨みは募っていた。

(いいだろう。願いを叶えよう。この世界を滅ぼそう。)

 新時代が始まろうとしている。


「こ、こ、こ、こ、皇女様!?」

 ミヤの前に死んだはずの皇女がいる。

「どうした? ミヤ。まるで死人が生き返ったみたいな顔をしているぞ。」

 優雅に玉座で笑みを浮かべている皇女様。

「バカな!? 確かに皇女様を殺したはずだ!?」

「残念。私は死ねないんだ。私には不老不死の親友がいてね。持つべきものはお友達だよ。」

 お友達とは魔王シュベルトのことである。

「ひ、額に目が!?」

「これは魔王の目、魔王眼だよ。」

 皇女様は三つ目の目を開くと魔王の力が使えるモードに変身する。

「1、2、3。」

 数字を数え始める皇女様。

「何を数えている?」

「おまえの死へのカウントダウンだ。」

「死へのカウントダウン?」

「私に害をなした者全て! 皆殺しだ!」

 魔王の力が使えるようになった皇女様。

「悪魔注入!」

「ギャアアアアアアー!」

 闇がミヤを飲み込んでいく。


「魔王様。今までの無礼をお許しください。罪はこの命で償います。」

 自害しようとするミヤ。

「やめろ。悪魔の自殺など死んでも死にきれないのだから。」

「これからは魔王様に忠誠を誓います。」

 正確にいうと人間のミヤは死んだ。目の前にいるのは悪魔のミヤである。

「ミヤ。私の身の回りを管轄する宮内庁はおまえに任せるぞ。」

「御意。」

 遂に皇女様は皇族の暗殺を行なってきた宮内庁を治めた。

「お父様、お母様。安らかにお眠りください。スズはやりましたよ。」

 空を見上げ亡き両親に報告する皇女様。

「今までは私に力がなかったから何もできなかった。だが、これからは違う。なぜなら私は魔王の力を手に入れたのだから! オッホッホー!」

 ここに女魔王が降臨する。

「ミヤ。おまえたちに命令を下していたであろう、あのお方とは誰のことだ?」

「はい。あのお方とは・・・・・・東京都知事の大池百合子です。彼女が女性初の内閣総理大臣になるために全て仕組んだことです。」

 あのお方の正体が判明する。

「あのおばはんか。」

 魔王な皇女様は動じることはなかった。

「笑顔と優しい言葉の裏で心の中ではほくそ笑んでいた訳だ。いいだろう! おまえの手足を一本一本もぎ取ってやる! 死んだ方がマシだという地獄を味合わせてやる! ワッハッハー!」

 皇女様の反撃が始まる。


「ワッハッハー!」

 大池百合子は笑いが止まらなかった。

「遂に、遂に私が女性初の内閣総理大臣になる時が来た! 来たのよ! ワッハッハー!」

 デスニーのヴィランのマレフィセンド並みの悪女である。

「世界が私に跪くのよ! ワッハッハー!」

 現在の世界はAIロボット兵器の開発に成功した、シン・日本帝国が支配している。

「任命式が終わったら皇女も用済み。ゴミ箱にでも捨ててあげるわ!」

 恐るべし権力への執念を見せる大池百合子であった。


「おまえの思い通りにはいかせない。」


 闇から様子を見ていた皇女様。

「我がお友達。シュベルトよ。私を助けてくれたおまえとの約束を果たす時が来た。太陽のある地上で暮らしたいというおまえの願いを叶える時が来たのだ。」

 皇女様は何かを企てていた。


「それでは内閣総理大臣の任命の議決を行います。」

 ここ国会議事堂。

(キタ! 私が日本を手に入れる時が! いや! 世界を手に入れる時がきたのだ! ワッハッハー!)

 今、正に女性初の内閣総理大臣が誕生しようとしていた。

「それでは投票を始めます。」

 議長が国会議員に投票を促す、議員たちが投票を始める。

「大池百合子氏に一票!」

 ここに来るまでの流れが、宮内庁が皇族を暗殺、自衛隊が世界に侵略、警察が国内の反乱分子を駆逐、内閣が反対勢力の皆殺し。ということで国会議員は全てあのお方を支持する者しかいなかった。

「それでは集計作業に入ります。」

 そして集計が終わる。

「集計の結果を発表します。投票の結果・・・・・・。」

 議長が結果を公表しようとする。

(さあ! 私の名前を呼ぶがいい! 私が内閣総理大臣になったら貧乏人共を皆殺しにしてやる! 選ばれたお金持ちの人間だけが生きればいいのだ! 税金泥棒の貧乏人は奴隷にして死ぬまで老朽化した水道配管交換工事をやらせてやる! ワッハッハー!)

 恐るべしあのお方の金持ち優遇思考。


ドカーン!


 その時だった。

「テロ!?」

 女性初の内閣総理大臣が誕生する一歩手前で国会議事堂で大爆発が起こる。

「ガオガオ!」

 そこにスライムやドラゴンたちモンスター軍団が現れる。


(モンスター!? いったいどこから!?)

 女性初の内閣総理大臣誕生はモンスターにより阻まれた。

「フッフッフッ!」

 その時、世界中の人々に不気味な声が聞こえる。


「私の名前はシュベルト! 魔界の魔王だ!」


「魔界の魔王!?」

 声の主のシュベルトは魔界の魔王であった。

「この世は私が頂こう! ワッハッハー!」

 言いたいことだけ言うとシュベルトは消えていった。


「ガオー!」

「スラスラ!」

「ドラドラ!」

 日本の国会だけでなく、魔王シュベルトのモンスターたちは全世界に現れ侵攻を始めた。

「キャアアアアアアー! 助けて!」

 逃げ惑う世界の人々。

グルグルグル!

 全世界を制圧していたシン・日本帝国の無人AI搭載兵器ジャパロボは全て闇に吞み込まれて消えた。


「やめなさい!? 私は女性初の内閣総理大臣になるのよ!?」

「お逃げ下さい! ここにいてはモンスターに殺されます!」

「クッ!?」

 大池百合子は国会議事堂から逃げ出した。


「これでいい。」

 幼い皇女様は笑っていた。

(良かったのか?)

 シュベルトが皇女様に尋ねる。

「ええ。良かったのよ。こんな世界なんて滅んでしまえばいいのよ。」

 皇女様の心は腐っていた。それもそのはずである。両親を殺され、権力やお金に魂を奪われた汚い大人を見てしまったのだから。

「さあ。我が友よ。作りましょう。新しい世界を。私とあなたが笑って生きられる世界を!」

 孤独な皇女様に気を使って心配してくれるのは魔王しかいなかった。

 つづく。




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