第3話

「昭司だけど。久しぶり、元気?」




久しぶりにかかってきた電話の向こうの彼に


ドキドキしながらも、テンションが上がる。



「里衣だよ、元気。昭司くんは?」



たわいもない話でも、声が聞けるだけで嬉しかった。



「りぃって夏休み暇?ヒロと一緒に住み込みで海の

 バイトするんだけど、りぃも行く?」



私の顔が自然と笑顔になる。


「行きたい!行くよ、絶対!」


最後の夏休みにずっと一緒にいられるならと、


断わる理由なんてなく、その場で返事をしていた。






1ヶ月分の荷物が入った鞄を私から受け取ると、


1番に私を乗せたと言ってくれた、


最近買った車の荷台に積み込んだ。




〝都合のいい女〟




1番に乗せた


なんて、嘘かもしれない。


もしかしたら他の誰かにも同じようなことを言ってい


るかもしれない。




そんなことは自分でも分かってる。




それなのに、むしろ会えるなら、


そんな関係でもいいとさえ思っていた。


いつも心のどこかで、


小さな望みを持っていたのかもしれない。




〝なんで一緒に連れていってくれるの?〟




聞きたかった言葉は、


助手席に乗った瞬間、


呑み込んだ。

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