救いの石板(月光カレンと聖マリオ33)

せとかぜ染鞠

救いの石板(月光カレンと聖マリオ33)

「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」

 そう石板には刻まれていたらしい。鳥綺ちょうきが王宮内を案内しつつ語る。それは古来トリ妖精国に伝わるもので「救いの石板」と呼ばれているとか。国が危機に陥るたびに為政者たちは石板に示唆を仰いできたが,何れの御時にか,はみだし大烏一門により石板は盗まれ,通常の妖精力では達しがたい高木の巣中に隠されてしまったそうだ。しかしさすがはゴールド――旱魃に見舞われた先代王妃の御代,彼女は鳥綺を従え盗まれた石板の記録を確かめにいった。

「お忘れではあるまいな。縦書きの記述で,『見たのは』のあとは コンマではなく読点だった。チュンチュチュンはっはっはっ――」

「石板の内容が知れ国情は救われたのかい?」

「あなたが進言したではないか」俺を ゴールドだと 勘違いする鳥綺が 怪訝な顔をする。「絶食後に 9回同じ夢を見たとき,夢に見たことを実際に試みられよと。王妃は米の雨の降る夢を9回見たのち王宮の塔より米を散布した。民は歓喜し奇跡も起こり慈雨に恵まれたのだ」

 大方ゴールドが科学の力を以て雨を降らせたのだろう……

「でもトリ妖精国はその後も災害つづきなの」鶏に似る女が現れ,つに分岐するを想わせるドレス腰部の装飾を揺すった。

「トリの降臨である~~」鳥綺が現王妃の御出座しを告げる。

「何も救われていない」トリは両腕をあげさげし苦悩を訴えた。シャーリングを施すドレス袖の 幾重もの長いレースが数びるみたいだ。「民は疲弊し,二世代王妃を務めた朕ら尾三おみ多伸羽たのは族に反感をいだく者も多い。国が滅びるまえに対処しなければ! 朕は思う――あなたは石板解釈を勘違いしたのでなくって?」

 だから俺はゴールドじゃない。彼女の勘違いの責任をおしつけられても困る。そもそも石板には――「『あの夢を見たのは,これで9回目だった』なんて 本当に書いてあったのかい?」

「書いてあった!」鳥綺が唇を尖らせる。「ともに目にしたではないか!」

「再度確認しにおいき――いやとは言わせなくってよ」トリが顎をしゃくれば,気絶したまま仰臥する三條さんじょうを兵隊たちが包囲する。銘々の腕に鶏がだかれている。

人喰鶏ジンサンケイだわよ――連れの彼が餌になっちゃ可哀相じゃなくって」

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