君と咲かせたい、百合の花を。

無名

第1話 - 

 とある春の朝。まるで私を抱きしめてくれているかの様に、お日様の光は私を優しく暖かく照らしていた。なんだか幸せ!って思った。こんな何気ない時が大好き。普通が大好き。億万長者になったり、有名人になったりなんてしなくていい。遅刻して先生に怒られてばっかりでも、テストで良い点が取れなくてお母さんに怒られても!⋯って、怒られてばっかり?でもいいや。これが私。私の日常なんだから。誰かになんて言われてもどうでもいいの!他人にとやかく言われる筋合いは無いでしょ?ふふん。なんだか今の私、凄く輝いてない?!まぁ当然だよね〜。私の人生は私が主役!輝いてないでどうするの!影なんかに居ないで、光の当たる方へ!


「 せんせー!おはよーございます!! 」


 嗚呼、自分でも分かる。とっても気分が良い!やっぱり、早起き出来た日の朝ほどテンションが上がる時はないでしょ!_あ、そう言えば!テンションって言うのは本来、"緊張"って意味らしいね。前まで知らなかったの。知ったきっかけは私のお父さんがね、「みーんな意味を間違えて使ってる〜」なんて急に話してきたこと!相変わらずだなぁ〜なんて思ったけど、なんだか物知りになれた気分!まぁ、一々そんなの気にしてらんないけど。


「 おぉ、藤本さん。今日は遅刻せずに済んだんだな? 」

「 そうなんですよ!たまたま早起き出来て_って、いつも遅刻してるみたいな言い方やめてください!今日みたいな日だってありますし、ギリギリでも間に合ってる日はあります! 」

「 ギリギリとは言ってもルールとしては五分前に着席なのを忘れてないか? 」

「 うっ、言い返せない⋯流石は先生⋯ 」

「 先生じゃなくてもそう言うよ。まぁ、将来の為にも時間は守っておくんだな。 」

「 はぁーい⋯ 」


 ちぇっ、なんて言いながら私は自分の席に座った。まぁ、先生の言うことも分かるよ?だけど、なんか気に食わないと言うか⋯でも事実⋯まぁ、深くは考えないでおこうっと。

 なんだか今日は早く来れたのか、友達の美佳が来ていない。ふっふーん、私があの子より早く学校に来れる日が来るとは⋯これは自慢しないとね!あの子ったら、どんな反応するかなぁ〜。悔しがっちゃったりして!まぁ私だって、本気を出せば毎日あの子より早く学校に来れるんだから_


「 は〜るっ! 」

「 わぁっ?!_って、美佳かぁ。ビックリしたじゃん!先生もいるし、変な声出させないで! 」

「 っはは、ごめんごめん。いや〜、はるが私より早く来てるなんてビックリしちゃって。でもイタズラのチャンスだったから! 」


 後ろから突然声を掛けてきたのは友人の田辺 美佳(たなべ みか)だった。いや、友人と言うより幼馴染?小学校からの付き合いなんだよね〜!なんかさっき、先生の「いつもの事だから気にしてないぞー」って声が聞こえた気がするのは気にしないでおこう。


「 もう、何回言ったらやめてくれるの?相変わらずで安心はするけど⋯。 」

「 はるも相変わらずで安心する〜♪ 」


 私が唇を尖らせながら呟くと、美佳ものっかってきた。心做しかからかわれてる⋯?まぁいいや。昔っから変わらなくてちゃんと安心してますよーだ!

 そんな事を思ってたら、遠くから先生の声が聞こえた。


「 嗚呼、天野か。おはよう。 」

「 おはようございます。先生。 」


 今登校してきたのは天野 晴斗( あまの はると )。そう、彼奴は物語でよく見る完璧男子!勉強は出来るわ運動は出来るわイケメンだわ!私と違って時間は守る!悔しい事に非の打ち所がない!あっでも!いつも寝癖がついてるし字は私より汚い!ふふん、私にも勝てる部分はあるんだから!⋯でもギャップとか言ってチヤホヤされてる!くっそ〜、男子なんてただうるさくて面倒臭い奴だと思ってたのに!まぁ、私だってイケメン男子いるかなぁ〜とか入学する前はルンルンだったけど!そこまで完璧とは聞いてない!_っと、そんな話は置いといて、私は後ろの席の美佳にニヤニヤとしながら小声で言う。


「 天野さん来たじゃんか〜? 」

「 も、もう!うるさいな⋯。一々言わなくても分かるってば! 」


 そうなのよ〜!美佳ったら、天野さんが好きらしい。直接聞いた訳じゃないけど、あの反応は当たりだね。顔を赤く染めちゃって。全く、可愛いところあるんだから〜♪

 まぁ、あの天野がウインクしたらそこら中の女子は恋の沼に一直線だろうなぁ。イケメンで非の打ち所がない⋯ああもう悔しい!完全な八つ当たりだけどムカつく!世の中にあんな男子いるなんて聞いてない!


「 てか、はるったら私の事ばっかり言うけど、あんたにも"そういう人"はいないの? 」


 そんな事をずっと考えていたら、また美佳が話しかけてきた。あんたにも、ってもう認めちゃってるじゃん。普通に聞いたらはぐらかしてくる癖に。


「 えぇ?居ないよ。 」

「 小学校の時から変わんないねぇ。全く、あんたに彼氏が出来る日はいつ来るんだか? 」

 美佳はぷーくすくすとでも言うように笑ってきた。

「 あーはいはい。私はあんな男達と付き合う気ないからね〜。 」

「 えぇ〜?でも将来はいい男に会うかもよ!まぁ想像出来ないけど! 」

「 わざわざ想像しなくていい! 」


 もう、なんて言いながら私はそう言った。美佳は変わらず「彼氏が出来たら真っ先に見せに来てよね!」なんて言ってるけど、適当に流しとく。そうしてる内に、HRの合図であるチャイムが鳴った。

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君と咲かせたい、百合の花を。 無名 @mumei_2368

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