贄少年のアンデッド冒険譚

たくましいなw

第1話

 それは、山奥の洞窟の中にあった。

 それは、一言で言えば祠であった。

 そこへ、中身の入った大きな麻袋を持った男が近づいていく。

 祠の前に辿り着いた男は、麻袋の中身を取り出し丁寧に祠に捧げた。


 それは、であった。


 まだ死んで間もないのか、腐敗等は始まっておらず、新鮮なものだ。

 男が祠に跪き、祈る。


「邪神様、邪神様、邪神ディルグラド様。この度贄を献上致します。どうか我らの村をお守りくださいませ……」


 どうやら死体の少年は、邪神に捧げる贄として殺されてしまったらしい。


 その後、一通り祈り終えると、男は来た道を戻って行った。




































 深く、昏く、冷たい闇の中に、僕は浮かんでいた。

 何故僕はこんな所に居るのか?簡単だ。死んだからである。だが、そんなことは。今、僕の頭の中には僕を殺した村人達への憎悪が渦巻いていた。


 憎い、憎い、憎い。


 どうしようもない程に、憎い。


 どれほどそうしていただろう。ふと、意識が遠のき、薄れていく。天国にでも行くのだろうか。それとも、知らなかったとはいえ村ぐるみで邪神を信仰していたのだから、地獄に堕とされるのだろうか。だが、それすらも今の僕にとってはどうでもいい。


 今の僕にあるのは僕を殺した村人達への復讐心と、二度とこんな理不尽な目に合わない為に強くなりたいという想い。それだけだった。


































 ふと、意識が浮上し目が覚めた。


 僕はどうなったのだろう。


 周りを見回すと、どこかの洞窟のようだった。


 自分の体を見下ろすと、そこには血塗れになってはいるが、確かに生前の僕の体があった。体に痛みなどもない。


 軽く体を動かしてみると、調子も悪くない……どころか以前よりも明らかに身体能力が上がっている。


 全くもって意味がわからない。僕は確かに死んだ筈なのだ。


 僕が困惑していると、背後から声を掛けられた。


「ようやく目覚めたようじゃな」


 僕が振り返ると、そこには僕と同年代くらいの、絶世の美少女がいた。街中を歩けば、百人中百人が振り返るほどの美少女である。だが、その身から放たれる圧力は明らかに人間のそれではなかった。


「君は……」


「儂か?儂の名はディルグラド。そこの祠で祀られておる神じゃ」


「……邪神……ディルグラド……」


「邪神、か。儂は闇属性を司っておるというだけで何も悪いことをした覚えはないのじゃがなぁ」


「……それで、そのディルグラド様がなぜここに?」


「ふむ、そうじゃなぁ……言ってみれば気まぐれじゃ。お主は儂に対する贄として捧げられたのじゃろう?じゃが生憎儂は贄など必要としておらん。扱いに困っておった所に、お主の魂が発する憎悪を感知してな。興味を持った儂はお主の魂を見守っておった。すると、お主の魂は元の体に戻り、アンデッドとして蘇ったという訳じゃ」


「僕が……アンデッドに……」


 なんとも実感の湧かない話だ。


「ちなみに今のお主はフレッシュゾンビというアンデッドじゃな。特徴としては普通のゾンビと比べて体が腐っておらんことじゃ」


「フレッシュゾンビ……」


「うむ。魔物としての脅威度は2といったところかの。…………お主、あの村の者共に復讐したいのじゃろう?」


「!……それは」


「よい、皆まで言わずともわかっておる。あれ程強烈な憎悪を発しておればな……。じゃが、今のお主が村に行ったとて村人達に勝てるかと言われると微妙じゃ。1対1ならともかく、囲まれると厳しいじゃろう」


「…………………」


 確かにそうかもしれない。今の僕は生前より身体能力が上がってはいるようだが、そもそもが12歳の子供だ。大人複数人に囲まれるとかなり厳しくなるだろう。


「そこでじゃ!お主、儂の元で修行せぬか?」

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