短編大得意のモヤさんの中編です。
今回は警察のミステリーです。理不尽な捜査方針に逆らって、真実の追及に全力を注ぐ田沢。その田沢を押しつぶしていく警察と花岡市役所。そしてまるで物のように取引される一人の少女。田沢の正義感が勝るのか、それとも政治組織が実力で制するのか。
ネタバレしないように、詳しくは述べませんが、ストーリー、構成、文章力、いずれをとっても申し分ありません。最後は大門軍団みたいなことになって、冷静に考えると荒唐無稽な気もしますが、巧みな進行で、現実のものと見紛うばかりの世界に引きずり込まれます。
これは相当ですよ。
読み始めたら止まりませんから、お時間に余裕のある時にどうぞ。
すごく考えさせられる内容の、社会派サスペンスです。
刑事の田沢は、自分たちの管轄する地域で不審な『事件』と遭遇する。
明らかな犯罪が行われたと見えるのだが、なぜか『事件』とは認識されない。
自分たちの住む市では『犯罪事件』の発生する件数はなぜか『0件』となっている。
それもそのはず、あからさまな犯罪が起こっていても、それを犯罪として認識せず、ただの不運や不幸で片付けているのだから。
腐敗した市政、腐敗した警察機構、そして絡んでくる反社会組織に外国からの不法移民。
そんな腐敗の坩堝のような環境において、田沢は正義を貫くことができるか?
この物語はフィクションのようでありながら、「世界のどこかで」今も確実に起こっていることかもしれない。
失敗国家と呼ばれる国。特定一族が権力を私物化している国。
それらは途上国だけでなく、有名な大国の中でも起こっていることかもしれない。
間違った人間が権力を握った結果、「よらば大樹の陰」とそれに逆らわずに迎合していく人々。そんな心が腐敗と悪徳の栄えを赦し、罪を罪として認識させない世界を作って行く。
いつの日か、日本でもそのようなことが横行する時も来るかもしれない。もしかしたら、既に横行している場所もあるかもしれない。
そんな想像を刺激される、テーマ性・メッセージ性に満ちた作品です。
犯罪発生件数0の理想都市と、そこに隣接する棄人の街。明暗を分けるのは、人の定めた『市境』という見えざる線おいてのみ。
だが、互いに生まれは違えども、降る雨の色はどちらも同じ、透明の青。
そして、死体が上がったのは市境だった――。
浮かびあがる張りぼての楽園の真相と、陰惨な過去。
仮初の平和という歪みが生んだ、『存在しないはずの少女』を巡り、キレちまった新人警官が立ち上がる。
――生来の凶悪犯など、おらんのです。教育と相互の理解。叱り、許すこと。そして持たざる者への寛容の精神。これこそがあらゆる人間の心の闇を晴らし、ひっきょう我が街を更に発展へと導くのです!
隣市の過去? そこに池を埋めるほどの死体の山があった? まったく、歴史とは悲しいものです……。え? 死人の数が合わないって? ……はて? では『それら』は、どこから来たんでしょうかねぇ……。