いつも隣を歩いている幼馴染が学校で清楚系美少女として人気者すぎるのだが
楠木のある
第一章
プロローグ
「秀介! 一緒に遊ぼっ」
物心ついたころには、この女の子の事をずっと間近で見てきた。
悪い所も苦手なものも好きな事も……。
女の子の名前は
俺の隣の家に住んでいる。
幼稚園も一緒で、小学校ももちろん同じ。
幼馴染? というやつらしい。なんかかっこいいよな、特別感があって。
「えぇ~、またかよ今日は俺男子と混ざってドッジボールやるぜ?」
「いいよ、渚も混ざるから」
「混ざるって言ったってなぁ」
「大丈夫! 渚は秀介ほどじゃないけど運動できるから」
にこやかに笑って言って見せる渚は最初は内気な女の子だった。
しかしある時から、元気で明るく、誰に対しても礼儀の正しい女の子になっていった。
そんな彼女はなんで今俺の高校で可愛い、美少女など呼ばれている……?
あれ、ていうか俺小学生なのになんで高校の事。
「そんなの決まってるじゃん、夢だからだよ」
「え? 夢?」
―――――――――その会話の後、目が覚める。
夢とわかった途端にスッと眠りから覚めることができた。
「秀介ー!! 渚ちゃんが来てるわよー」
という母の声を聞いて俺は自分の部屋から出る。
すると制服姿をビシッと決めた渚がキッチンでトーストを食べていた。
「ん、んぅ……」
「いいよ、食べてからでおはよ渚」
「ふうっ――――おはよう秀介」
「家でご飯食べてこなかったのかよ」
トーストを食べている姿に俺が一言口出すと、横から母親がスッと出てきて微妙な顔をしながら説明してくる。
「30分前から来てたけどアンタが全く起きないからでしょうが! だから簡単な物だけ出してあげたのそんなにがっつりなんて食べてないわよ」
「さいですか……てか来てたこと知ってたなら起こしてくれたって――――」
「起こしたわよ3回も」
「あら……まぁ」
3回も起こされたのか……全然気づかなかった。
そんなに起きなかったら放っておくのも頷ける。
「ごめんねー渚ちゃん」
「大丈夫です。慣れてますから」
母親の謝罪に、にっこり笑みを浮かべて返事をする渚に今度は俺が横やりを入れる。
「ちょっと待て、慣れてるとはどういう意味かな?」
「どうもこうも、大体いつもこんな感じだから」
「いやそんなこと――――」
「ないなんて言わないでしょうね」
ない。
と心の中で言葉を放った。
「中学の映画を見に行く時だって――――」
とまた渚が二人の昔の話を繰り返し、一段落したところで朝食を食べ始める
こういうことがあったねと言い合う感じになり、これは日常茶飯事なので周りもだれも止めようとしない。
「……おはよ」
という少し低い声で不愛想にボソッと挨拶してきたのは弟の
「よぉ、今日も早いな」
「――――チッ、今日は遅い方だよ」
え、え? 今舌打ちしたよね。
絶対チッって言ったよね?
「そうか」
「兄貴こそこんな時間にもう起きてるなんて――――な、渚さんっ、お、おざっす!!」
「ぷぷぷぷ……焦りすぎだろっ」
「黙れよクソ兄貴」
俺が大介の慌てように笑っているとギロリと本当に俺のことを憎むような目で睨まれる。
心臓を掴まれたような感覚になり、俺は慌ててズズッとお茶を飲む。
「もうっ――――どうしてそういう風にいじめるかなぁ……おはよ、大ちゃん今日も朝練?」
「はいっ、今は自主トレ期間ですけど」
「えらいねー、お兄ちゃんもちょっとは見習ってほしいものだね」
「はは、それじゃあ俺はこれで」
なんだ今の乾いた笑いは、渚も変に大介に俺のことを話さない方が良い。
ああいう嫌な反応が返ってくるのはわかっていることだから。
「もうちょっと仲良くならないかなー、大ちゃんと秀介」
「それは……たぶん今は無理だろうな」
「どうして? 兄弟じゃない」
「折り合いがつかないとな兄弟でも仲良くするのは難しいんだよ」
俺がそう言うと渚はポカンとよくわからなそうな顔をしていた。
まぁ渚には分からないことだな。
わかっていたら、辛いのは渚の方だ。
「あの、もう学校行かなくていいんですか? そんな兄貴に構っていると渚さんまで遅刻しちゃいますよ」
「あ、今日は大丈夫なの、入学式で私たちは9時から学校なんだ」
渚が説明した所で俺の悪い所が出る。
「そうなの高校生の入学式の朝は遅いの、がきんちょはさっさと練習に行け」
「――――ッ、うるせぇよクソ兄貴!!」
「あら、渚が見てる前でそんな悪い言葉を使っていいのかなー?」
「さいてーだな」
そう言って、大介は渚にペコリと一礼して家を出て行く。
渚は俺の方を呆れた様子で見ていた。
「もう、本当になんであんな言い方しかできないんだか」
「渚は大介の味方かな?」
「そういうわけじゃないけど、もう少し優しくしてあげなさいって言いたいの」
「へいへい」
気の抜けた返事をしながら学校へ行く準備をする。
「それじゃあ行こうか」
「んじゃあ行ってきます」
「はーい行ってらっしゃい」
「すみません、お邪魔しました」
母さんに挨拶をして俺たちは家を出る。
渚は礼儀正しく近所でも美人で優しいとも評判だ。
近所だけでなく、それは学校でも同じで月に一度は告白されていると思う。
そんな学校のアイドルと幼馴染ってだけで親しくしてもらえるのはラッキーなのかもしれない。
しかし、いつも隣を歩いていた幼馴染が清楚系美少女で学校の人気者になるとは……あの頃は思ってもなかったな。
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