ドリームマッチングシンドローム
めぐすり@『ひきブイ』第2巻発売決定
第1話
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
お互いキレていた。
「「しつこい」」
顔も名前も知らない男女二人きりで真っ白い部屋に閉じ込められる夢。
1回目はドキドキした。
この部屋から脱出するために2人で協力し合っていた。
でも普通に目が覚めた。
2回目になると互いに夢の住人ではなく、意識がある人間だと察知して話し合った。
互い個人情報などを教え合うことはできない。
ぼかして伝え合うのことも意識した時点でできない。
つまり見知らぬ他人であることを強要されている。
この部屋がなんなのか話し合う以外には、無難に趣味の音楽や動画、ゲーム、アニメで盛り上がった。
3回目は何もせずに過ごしてみた。
何も起こらず終わった。
4回目は互いに意識して、キスなどをしてみた。
次の展開があるのかと期待して。
けれど恥ずかしいだけだった。
5回目以降は意識しないように努めた。
互いの音楽の趣味や好きな漫画などはすでに共有していて話題もなかった。
そして9回目。
「「しつこい」」
怒り以外の感情を抱けなくなった。
互いに向けた感情ではない。
夢に対しての感情だ。
いい加減イベント起こせ。
恋愛感情を抱かないとダメ。
2人デスゲームを始めろ。
などの命令を下して見やがれ無能と怒りを抱いたのだ。
一体何がしたいんだ。
お互いに一通りの妄想はした。
運命の相手とか、実は生き別れた双子だとか。
出生記録まで調べて親に不審がられた。
でもなにもわからなかった。
高校に進学した二人は全ての同級生の顔を確認した。
同じ高校の同級生として出会えなければ「本当に誰だこいつは」となるからだ。
だが同じ高校でもなかった。
二人は落胆して諦めた。
もう会うことはできない。
そうやって通学電車のため息をつき、隣の席からもため息が聞こえた。
そして顔を合わせる。
「「いたぁーーー!」」
急いでお互いの名前と連絡先を交換した。
出会った2人がこれからどんな関係を築くのかわからない。
でも出会えたのだ。
もうあの夢は役目を終えただろう。
そう安心していたのに。
出会った日の夜に9回目の夢を見たのだ。
起きた2人がスマホを取り出して。
「「しつこい」」
とメッセージを送りあったのも仕方がなかった。
10回目の夢はあるのだろうか。
ドリームマッチングシンドローム めぐすり@『ひきブイ』第2巻発売決定 @megusuri
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