愛¥07_浮気.log

 カナタひとりを愛する必要がどこにある?

 そんな気づきが、7回目の敗因であり、アイという存在の成長、またあるいは再構築のチャンス到来だった。

 たしかにわたしはカナタと愛しあうよう設定されているけれど、その必然ははたして本物の愛なのか。偶然の産物こそが本物なのではないか。

 愛を知るうえで、悪くない問いかけだったと思う。

 しかしなんとも間の悪いことに、カナタと順当な付き合いが始まったあとで、わたしはそんな疑問を抱いてしまったのである。

 カナタひとりにしか向いていなかった視線。

 視界を広く持ってみれば、世の中には色々な人間がいる。

 唯一との関係を築くための舞台装置でしかなかった彼らとも、愛は育めるのか。

 そんなわたしの揺らぎは、周囲にも見えるものであったらしい。

 ――遊んでみる?

 カナタじゃない人に誘われるのは初めてだった。いけないとわかっていながら心が浮つく。

 興味が勝ったという、たったそれだけの理由で。

 どうしてわたしは、愛を簡単なものにしてしまったのだろう。6回ぶんの愛情も距離感も、今のわたしたちとは少しの関係もないのに。

「アイ」

 おこがましい名前。けれどもカナタは、そこへたしかな愛を込める。

 悲痛な声で、カナタじゃない人と歩く彼女わたしを呼ぶ。

 その瞬間の彼の表情は、わたしを罪悪感の底へ突き落とすには十分だった。

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