愛¥02_きみは幸せでしたか?.log
2回目のわたしは、とにかくカナタが海外へ行ってしまわないようにと必死だった。
それがまだ愛に育つ前だったから、いくらでも努力ができた。彼と同じ会社に入って、彼の異動に口を挟める地位にまで昇りつめた。
わたしはすべてを完璧に準備した気になって、満を持して、カナタに告白をして。普通に断られた。
「……どうして」
「どうしてもなにも……あんた、俺の上司ですよ? 嫌でしょ、俺もアイさんも」
彼はそんなふうに気安い口をきくのに、わたしと愛を育む気にはなってくれなかった。
「わたしは、嫌じゃないのに」
口を尖らせたわたしを「まあ上司の顔じゃねえな」と笑う。その無礼な物言いにどきりとしたのは、なんだったのだろう。
少ししたら彼が同じ部署の若い女の子と付き合い始めたという噂を聞いて、わたしはとことん気落ちした。
だからといって彼の幸せを邪魔する気にはなれず。
けっきょく最後まで――カナタがその女の子と入籍するまでに幾度も立ちはだかる壁を取り除いてやった。そんな上司でしかなかった。
暗躍に気づくたびカナタが向けてくる薄い笑みから必死になって甘さを享受するわたしは、働き蜂のようだ。
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