夢の中の泣き声
広之新
プロローグ
あの夢を見たのは、これで9回目だった。体を起こすと全身にびっしょりと汗をかいている。私は右手で額の汗をぬぐいながらその夢を思い出していた。
初老の男が泣き騒いでいた。両腕を誰かに捕まれて抑え込まれている。
「俺は無実だ! そんなことやってねえ!」
男は白髪を振り乱して必死に訴えていた。そして辺りは山の中になり、周囲から誰かの悲し気な泣き声が響き渡る・・・
私はこの男を知っている。強盗殺人と放火で逮捕され死刑判決の出た奥田雄二だ。10年前、民家に忍び込み、金品を盗んで男性をナイフで刺殺、そして放火してその男性の年老いた父親と幼い子供2人を死に至らしめた。
私はある別の事件の参考人として刑務所で奥田と面会したことがある。彼はその時、そう叫んだのだ。刑務官に抑え込まれながらも・・・。
「どうしてこんな夢を続けてみるのか・・・」
私は考えてみた。だがその答えはまだ見つからない。夢から覚めても、あの泣き声だけが頭の中にこびりついている。
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