事後

「ちょっと貴方達!一体ダンジョンの中で何があったの!?」


ゲートから出てきた俺に、教官が切羽詰まった顔で質問してくる。


『何があったって、一部始終を監視していたから分かるんじゃないのか?』


「それが貴方達が準恒星級ダンジョンに入った時から監視ができなくなったのよ!

しかも、ルナさんは負傷しているじゃないの!

ほんといったいなにがおこっていたの!?」


俺はことの成り行きを説明した。明らかに強さが違う敵、1度死にかけたことなど。

冥虎についての話は沢山したが、白虎については話はしなかった。神星級と交流をしてなんて事を知られてしまったら面倒な事になるからだ。


「そんなことがあったのね───

一体ダンジョンボスをどうやって倒したの?」


『ルナが善戦してくれておかげで、弱っていたところを何とか倒すことができた。』


「そうなのね、『流石ルナ』と言いたい所だけど、今回はこちら側のミスでもあるし、負傷者も出てしまった以上責任を取るしかないわ。

本当に今回は申し訳ない、アラクス君。」


深々と頭を下げる教官。


『いや、そんな気にしないでくれ。

謝るなら、人一倍戦った彼女に頼む。』


「わかったわ。

とりあえずさっき、他の教官と話した結果。

冥虎がいたダンジョンの階級は暫定巨星級、及び

貴方達を巨星級ダンジョンクリア者とすることにするわ。」


『わかった。ルナにもそれを伝えといてくれ。』


「もちろんよ。」


俺はひとまずその場を後にし、他の生徒達がダンジョンをクリアするのを待っていた。


((ついでに、今俺がどれくらいのレベルなのか確認しとくか。))

ルナに教えてもらった、ウィンドウから自分が所持しているスキルや魔法、称号などが確認できる機能をつかい、今自分が使えるものを確認することにする。


『ウィンドウオープン』


ウィンドウを開き、所持魔法一覧の場所を開く。

((まいったな───))


基本的な魔法は使えるものの、所々文字化けしている所があり、それをタップしてみると、


「所有者の身体のレベルが追いついていません」


と表示されてしまう。


((強力な原初の魔法や、ルーン呪文など全然使えないじゃないか───暫くは戦い方も考えるべきだな…))


そう考えていた瞬間。


「アラクスくん!」


聞き覚えのなる声が俺を呼んだ。


「なぜ貴方が倒したボスを私の手柄にしているのですか!?」


焦った様子で喋っている。


『別にどうだっていいだろ。

そもそも、俺がボスを倒したとは限らないじゃないか?』



「私は見たんです。ボスに攻撃されたあと、貴方が聖を極めた者にしか使うことができない"サンクチュアラリ"を使用していたのを。

そして私をおぶってダンジョンを後にしたことを─」


((面倒なとこをみられていたようだな))


『なるほど、見ていたのか。

まぁ俺は面倒事に巻き込めれるのはいやなんだ。

君が倒したことにすれば俺の負担も減って、君も規格外のボスを倒したとして有名になる。

WinWinじゃないか───』


「そんなので有名になっても嬉しくありません!

私は私の実力で有名になりたいのです!

しかも、力があるものが評価されないのはあってはならない事です。この件はしっかり教官に伝えときます。」


『自分の手柄にしないなんて、随分としっかりしているな───』



「これぐらい普通のことですよ!

あと、それと─────

助けていただき、ありがとうございました───」


ルナは感謝を伝えた。


『どうってことないさ』


「ふふ、そろそろ結果発表の時間ですよ。

会場に戻りましょ───」


ルナは手を差し出し、その手を俺は取る。


『そうだな、そろそろ行くか』


俺はその場をルナと共に後にした。






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