まっすぐなふたり
Wo48
プロローグ:まっすぐなものに惹かれる理由
2040年の湘南。世界はAIによって便利になった。
街には無人の車やドローンが行き交い、人々は便利さを手に入れた。
だけど、どれだけ時代が進んでも、変わらないものがあった。
潮の香りがする海。
朝日に照らされたグラウンド。
そして、何かに夢中になる若者たちの姿──。
***
みなさんは、「まっすぐなもの」に惹かれたことがありますか?
たとえば、まっすぐに伸びた一本の道。
たとえば、空に向かって高くそびえる塔。
たとえば、迷いなく一直線に飛んでいくボールの軌跡。
「まっすぐなもの」には、不思議な力がある。
それは、見る人の心を引きつけ、どこまでも視線を誘う。
まっすぐなものは、美しい。
だけど──「まっすぐであること」は、決して簡単なことではない。
まっすぐ進もうとすれば、風に押し戻されることもある。
迷いも、不安も、時には壁のように立ちはだかる。
それでも、それを振り払って進む人の姿は、誰の目にも強く映る。
この物語は、そんな「まっすぐなもの」を追いかけた二人の話。
── まっすぐにバットを振り続けた少年と。
── まっすぐなものを描き続けた少女。
彼らはそれぞれの道を歩んでいた。
しかし、ある日、二人の視線が交わる。
それが、互いの人生に何をもたらすのかは、まだ誰にもわからなかった。
だけど、この物語が進むたび、きっと気づく。
「まっすぐでいること」の意味を。
──「まっすぐなふたり」の物語が、ここから始まる。
―そして、春の光の中で、“ふたり”の物語は静かに動き始めた。
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