ダメ男製造機
海月
プロローグ
【ダメ男製造機】とはあれやこれやと世話を焼き、
男の要求は何でものみ、言う事をきいてしまう。
また、浮気をされても許してしまい、
結果男を腑抜けさせてしまう女性の事を指す。
私(
田舎の学校だったので、クラスは1クラスしかない小さな小学校だった。
朱里は周りの子たちよりも背が低く、華奢で年下に見える。けれど、活発な性格でクラスの中心にいる目立つ存在だった。
誰にでも優しく、しっかり者の彼女は皆に頼りにされていた。皆が嫌がる事でも率先してやるし、朱里が悪口を言っている所を見たことがない。裏表のない性格だった。
私はいつだったか、彼女にこう訊ねた事がある。
「自分の時間がなくなるのに、何で面倒臭い事を進んでするの?」
私は朱里とは違い、面倒な事はやりたくない性格だったので朱里が理解出来なかったのだ。
「断るのは簡単だけど、私が断ると皆が困るじゃん。私はそこまで嫌だって思わないし。私がする事でスムーズに決まるならそれでいいんだよ」
自己犠牲というやつだ。自分の幸せよりも他人の幸せを優先する。見方によっては偽善者に見えるだろう。それを分かっているのか、彼女はあまりその事を表に出そうとしない。普段は自由奔放な性格に見える。なんでもそつなくこなし、器用に見せかけているが実の所は真逆だ。
私は朱里の事を頭がいいと思っていたのだが、進学する高校が推薦枠で既に内定していた朱里は中学3年の最後のテストで「実力がどの程度か試してみる」とテスト前の勉強を一切せず受けた。
すると、まさかの数学が100点満点中7点と言う驚異的な点数だった。口にはしなかったが、もしかすると私よりも頭が良くないのではと思ってしまった。
彼女が今まで努力していい点数を取っていたのだと知った。
彼女は意外と頑固な一面もある。一度自分が決めた事は何があっても、貫こうとする。「やらずに後悔するよりも、やって後悔したい」というのが彼女の口癖だった。
そうなると、いくら私が忠告しても無駄なのだ。
そんな彼女が私は心配だった。私から見ると酷く生きにくそうに見えたからだ。
常に周りに気を遣い、周りが求める自分になろうと努力していた。そうする事で自分の存在意義を見出そうとしているようにも見えた。
「朱里はなんでそんなに気を遣ってるの? 疲れない?」
そんな質問を投げかけた事があった。
「私、子供の頃から『あんたは不細工なんだから、愛嬌がないと誰も相手にして貰えないよ。皆に優しく、困ってる人を助けてあげられる人にならないと。不細工で性格悪いんじゃ目も当てられない』って言われて育ったんだよね」
そう朱里は笑って答えた。きっと朱里の母親は朱里を想って言ったのだろうと思った。厳しい人なのは確かだが、朱里の母親は子供想いのいいお母さんだというのは知っている。
「きっと朱里のお母さんは優しい人に育って欲しくて言ったんだろうね。けど、朱里は不細工じゃないからね」
実際、本当に朱里は不細工という程ではなかった。小学校でも中学校でもモテていたのは知っている。
しかし、朱里は本気で自分が不細工だと思い込んでいるようだった。道理で今まで自己評価の低い発言をしていた訳だ。
朱里のお姉さんは3歳上で私たちが中学生の頃は中学校の近くのコンビニでアルバイトをしていた。それ故、同級生達はみんな朱里のお姉さんを知っている。
美人なお姉さんだったので、同じ学年の男子からもからかわれたりしていた。
「八倉の姉さんは美人なのに、八倉は似てなくて残念だったな!」
所謂思春期男子にありがちな好きな子を過度にからかってしまうというやつだ。それにより、朱里はさらに自己肯定感の低さを拗らせていった。
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