第16話 飛車堕ち

郊外の一室にあるホテル。

通りから少し外れた位置にある少し古いそのホテルは外見こそ古いが中はそこそこ綺麗で地元民にも愛されていた。

特に後ろめたいことがあるとよく使われる。

例えば不倫や援助交際、何かの取引など、とにかく人目を避けたい利用者にはうってつけのホテル。


そのホテルに中学生の一団が入って行った。


「うわー…俺超楽しみ!」

「ホントホント!」

「すっげえよなあ!うっはー!!」


男達は興奮の最中にある。


「サトシおめえすげえよな!ホントありがとう!」

「ナイスだぜサトシ!」

「すげえよサトシ!」

「ん?お、おう…」


サトシと呼ばれたその男は頭にクエスチョンマークを浮かべている。

先日アカネへの報復作戦を聞いた。

なんでもこいつらが捕まえてホテルに監禁したアカネを全員で襲うと。

もう楽しみで仕方がなかった。


逸る気持ちを抑えて指定のホテルの一室に入る。


「それでサトシ?部屋はどこなんだ?」

「え、ああ。303号室だよ」


先ほど飛鳥様から電話が来た。


「飛鳥様は外せない用事があって、ちょっと遅れるから先に始めておけってさ」

「ああ。その電話なら俺にも来たよ」


なんでもどうしても外せない用事があるらしい。

先に始めておけとの指示があった。


よかった。

もし飛鳥様が来るまで待て、と言われていたら大変だった。



部屋の明かりは薄暗く、ベッドの上には頭に麻袋を被された裸の少女がいた。

腕を縛られてベッドの上部に固定されており、何もかもが丸見えになっている。


「「「「おおおーーー!!!!」」」」


男達は興奮して声を出す。

すると男の声に気が付いたのか、ベッドの女がビクリと震えた。


「いや!! やだ!! 離して!! ……いやあああああああああああ!!!!!」


それは間違いなくアカネの声だった。

アカネの声は可愛らしく、特徴があるので間違いない。


いつも可憐なアカネ。

笑顔の可愛らしいアカネ。


そのアカネがいま、裸に剥かれて鳴いている。

アカネが必死に抵抗するその様子に、彼らの目は獣のように光った。


館山飛鳥の姿はそこにはない。


プルルルル

プルルルル


すると、取り巻きの1人に電話が来た。

スピーカーにして電話に出る。


「もしもし飛鳥様?お疲れ様です!上手くいきましたね!」


『ええそうね。アカネのヤツ泣き叫んでいて最高の気分だわ!私もすぐに行くから

先に始めてていいわよ』


うおおおおお!!

と男達は吠えた。


「ありがとうございます!そうします!」


『ええ。たっぷり可愛がってあげなさい。あ、あとで脅しに使うから、テーブルの上に置いてあるスマホで撮影しておきなさいよ。あと頭の袋は絶対取らないでね。アンタたちはあの女の顔を見たら罪悪感が出るかもしれないし。あの女の絶望の顔を最初に見るのは──私の特権よ』


「分かりました!!」


『それじゃあ早く始めなさい。楽しみにしているわよ?』


飛鳥様はそう言うと電話は切れた。

男達は少し残念に思った。

アカネの泣き叫ぶ顔が見たかったし、それに口でも楽しみたかったのに。

でもまあ身体だけでもいいか。


「それじゃあ始めるぜお前ら!!」

「おおおーーー!!」


「いやああああ!!!やめてええ!!!」


彼らは、もう止まれなかった。

躊躇も、迷いも、なかった。

袋の中のアカネは、必死に、泣き叫んでいた。

だが、男たちは笑っていた。


アカネの鳴き声など完全に無視である。

男たちはアカネの身体に欲望の限りをぶつけたのだった。


―――――


そして10時間が過ぎた。

少女の悲鳴は、もうかすれていた。


「やめ‥てぇ… おねがい…もう…いやぁ…」


口数も減り、涙も流れない。


「満足したな」

「俺も。もう一滴も出ねえわww」

「俺も俺もwwいやー最高だったなww」


男達は一通り満足した様子だった。


「そういえば…飛鳥様結局来なかったな?」


「そうだなー」


せっかくだから飛鳥様も一緒に、と思ったのに残念である。


「まあいいか。そういやさ、そろそろコイツの顔見たくね?」


「確かにwwちょっと口でも楽しみたかったしなwww」


「もう飛鳥様来ねえし取ろうぜ!」


「しっかりスマホで撮影しておかないとなww後で脅迫で使うんだから」



男たちは、そっと袋に手をかけると頭から取り外した。



バサッ。



少女の頭から袋が落ちる。


「………………は?」


「………………え」


「え?」


「え? おい……」


そこにいたのは。


 


──館山飛鳥だった。


 


「っ……ん、ふ……?」


目を開けた飛鳥は、虚ろな目でぼんやりと天井を見つめていた。


口元には乾いた泡の跡、体には赤い手形と痣。

館山飛鳥は猿ぐつわを嵌められており、一切声が出せなくなっていた。

また猿ぐつわには小型のスピーカーが付いている。


ワケが分からなかった。


男たちは、一瞬、自分たちの行為が夢だったのではないかと錯覚した。


だが──


目の前にいたのは、間違いなく、館山飛鳥だった。


「あ……あああ……っ……!?」


「うそ……まじで……」


「な、なんで…!?」


 


その時。


ドンドンドンドン!!!

けたたましいノックの音が部屋中に響いた。

外からは複数の声が聞こえる。


「警察だ!!早くドアを開けろ!!!」


「この部屋で婦女暴行が行われていたことは通報で分かっている!!大人しく出てこい!!」


「婦女暴行の現場をライブで流すとはいい度胸だなゴミめらが!!」


茫然とする男4人。


3分後、扉が破られた音とともに、彼らは取り押さえられた。


必死に叫ぶ声。


意味のない弁明。


もはや逃げ場はなかった。


そして男達はワケも分からず警察に捕まり連行されていく。


その様子を館山飛鳥は虚ろな目で見ていた。



――――――――――――


「ふう」


ところ変わってここは青崎銀河の部屋。

10時間以上にも及ぶライブ中継を終えた銀河は少し疲れた様子だった。


「やれやれ… 犯される少女のアテレコなんて初めてだったけど、存外疲れるものだねえ」

「…お疲れ様。こっちもライブ終わった。同時視聴者数2万5千人だってさ」

「うんまずまずかな」


絵馬の言葉に青崎銀河は微笑んだ。

先ほどの様子を思い出す。


サトシの声で集合時間が早まった旨を館山飛鳥に伝え、ホテルの一室に呼び出して速やかに眠らせた。

その後裸の状態で顔に麻袋を被せてベッドに置いておいた。


きっと館山飛鳥は何がどうして、誰にどうされているのか、何もかもが分からなかったはずだ。


ちなみに本物のアカネはいま、自宅で竜乃さん・兎姫ちゃんと一緒にお泊まり会の最中である。

銀河も誘われたが、大仕事があったので断らざるを得なかった。


「…それにしても大したものだね。アカネの声なんて本物にしか聞こえなかった。相変わらず見事」


「ははは。当然だよ。だって…」


微笑む銀河の顔は清々しくも美しかった。


「この声は誰よりも練習したからね」


アカネの声と寸分違わぬその声。

恐らく両親にすら聞き分けることは不可能だろう。



さてこれで残りのターゲットは、あと1人。

取り巻き含めてあと5人。


 


銀河は飲んでいた紅茶を置くと呟いた。


「……さて。大トリ、行きますか」


いよいよ舞台の幕が下りようとしていた。

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