第6話:決死の突撃、そして散乱する夢

計算された偶然と才能の開花:7SEEDSでの決定的瞬間


佐藤からの助言を受け、七海は一瞬の迷いを振り切った。彼女の瞳には、強い決意の炎が燃え上がっていた。周囲には、ナナミ・シノハラを守る黒人男性のSPが立ちはだかっていたが、その威圧感に怯むことなく、七海は自らの決意を貫くことを選んだ。


「やってやる!」


この力強い言葉は、彼女の覚悟の表れだった。突撃する兵士のように、彼女は取材陣と関係者に囲まれたナナミ・シノハラの元へ駆け寄った。


「すみません!急いでいるので!道を空けてください!」


彼女の行動は大胆で、無謀にも映った。彼女は、関係者に体当たりするようにして、人群の中を突き進んだ。わざとらしく、その勢いで転倒し、バッグからスケッチブックとデザイン画が散乱した。一見すると失敗だが、これは七海の綿密な計画、彼女の才能を世に知らしめるための、計算されたばらまきだったのだ。


散乱したデザイン画は、単なる偶然の産物ではなかった。それは七海の渾身の作であり、並外れた才能が感じられる力作ばかりだった。周囲の騒然とした様子とは対照的に、デザイン画は周囲の注目を集め始めた。7SEEDSのスタッフたちは、まるで大切な宝物を扱うかのように、慎重にデザイン画を拾い集め始めた。


そのとき、黒人男性のSPが英語で七海に声をかけた。


SP「Excuse me, miss. Are you a designer?」


「君、デザイナー志望かい?」


七海は臆することなく、大きな声で答えた。


七海「Yes, I am.」


この瞬間、伝説のデザイナー、ナナミ・シノハラの視線が、七海のデザイン画に注がれた。彼女は一枚のデザイン画を拾い上げ、じっと見つめていた。その表情は、驚きと感銘が入り混じったものだった。七海の才能が、ナナミ・シノハラの心を掴んだ瞬間だった。


ナナミ・シノハラ「彼女の連絡先を聞いておきなさい!後でオフィスへ来るように!」


この言葉は、七海の努力と才能が実を結んだ瞬間を告げる、歓喜の知らせだった。取材陣からは感嘆の声が上がった。


取材陣「よかったな!君、すごいよ!(笑)」


七海は、苦笑いしながらも、この奇跡的な展開に戸惑いを隠せない様子だった。しかし、彼女の心には、喜びと、今後の更なる飛躍への期待が満ち溢れていた。この出来事は、七海の努力と才能が実を結んだ瞬間だった。彼女の夢への道は、これから新たなステージへと進むことになるだろう。計算された偶然、七海の揺るぎない才能、そして、その才能を見抜くナナミ・シノハラの慧眼。この三つの要素が絡み合い、七海の運命を大きく変えた、まさに劇的な瞬間だった。



SPは、七海の突進を制止することも、注意することもなかった。 彼の視線は、常に七海の動きに注がれていた。 七海の転倒、散乱するデザイン画、そして、それを拾い集めるスタッフたち。 SPは、それら全てを、まるで予め分かっていたかのように、静かに見守っていた。 彼の表情は、一切動かなかった。 しかし、彼の目には、七海の行動の意図と、その才能への理解が、静かに宿っていた。 それは、言葉では表現できない、深い共感だった。

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