妖精と見る夢【KAC20254】
孤兎葉野 あや
妖精と見る夢
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
私は草原の中を歩いていて、終わりが見えないくらいに広くて、このまま、どこまでも行くことになるんだなって、思ってた。
だけど、足元に何かあるような気がして、しゃがみこんでみれば、一輪の花を見付けたんだ。
よく見れば、少し弱っているようで、私は水筒を取り出して、そのお花に水をあげる。
やがて、元気を取り戻して、ぱっと花弁を開いた花は、日の光に合わせて向きを変えるように、私に一つの方向を示してくれた。
その先は、たくさんの花で彩られていて、私はすぐに決めたんだ。こっちの道を行こうと。
そうして歩いていると、楽しくて、温かくて、時間を忘れるような気持ちになってしまう。だけど、いつしか気が付いたんだ。自分の腕に、花が絡み付いているのを。
どうしてそうなったのかは、分からないけれど、可愛いなと思って、私はまた進み続ける。
だけど、どんどん身体が重くなって、確かめてみたら・・・今度はその花が、全身を包み込んでいたんだ。
それを見た時・・・私は幸せだった。大好きなお花と、一つになれたんだなって・・・・・・
「ふうん・・・9回目って、結構な数よねえ。人間が夢を見る仕組みは、私には分からないけれど、心当たりが無いなんて、まさか言わないわよね、シオリ?」
朝起きて、最近よく見るようになった夢の話をすると、今は手の平サイズに戻ったルルが、私をじとりとした目で見てくる・・・
妖精と人間で、見る夢に違いがあるのかということにも、興味が湧いてくるけれど、話が大きく脱線しそうだから、やめておこう。
「うん、もちろんあるよ。それで、幸せなのは確かだけど、夢の中とはいえ、身体が動かなくなるってどうなんだろう・・・と、ふと思ってね。」
「そうねえ・・・シオリが、息を切らせたままで、私にもたれかかって眠るのを、止めればいいんじゃないかしら。」
「うっ、それは・・・その、嫌とかじゃないんだけど、ルルが時々激しくて・・・口が塞がり気味というか、私も呼吸を忘れて受け止めちゃうというか・・・」
「嫌じゃないなら、いいのよね? そっちのことよりも、シオリも少し落ち着いてから、眠るとかしなさいよ。」
「そ、それもそうなんだけど、ルルに包まれてると、幸せな気持ちになっちゃって、すぐにぐっすりと・・・」
「はあ・・・仕方ないわね。そんなシオリも可愛くて、つい抱きしめちゃうけど。」
「あれ? 何か原因らしきものが出てきたよ、ルルさん・・・?」
「あら。それじゃあ、シオリが寝たらすぐに、私も中に戻って休めば良いのかしら。放置するみたいで、可哀想ね。」
「うっ・・・それは寂しいから、今まで通りでお願いします。」
結局、ルルの掌の上という気もするけれど・・・幸せだから、良いのかな。
「ところで、今日は予定が無いと言っていたわよね。こっちになる力は、十分に残っているし、今の話を試すのなら、すぐにでも構わないわよ。」
ルルが笑みを浮かべて、力を使い、私と同じ大きさへと変わる・・・どうやら、10回目の夢を見る時も、間近に迫っているようだ。
妖精と見る夢【KAC20254】 孤兎葉野 あや @mizumori_aya
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