第7話 「ゲームしません?」…はあ。

平成2年。

すでに35年前。


就職するまで茅ヶ崎で生活していた私はいわゆるゲームオタクだった。


あの当時私の保有していたゲーム機は『ファミコン』『スーパーファミコン』『PCエンジン』『CDロムロム』『MSX』だったと思う。


茅ヶ崎は人口が多い。

ゆえに私程度のゲームの保有者は数多くいた。


何しろ貧乏ではあったがバイトの収入は多かった私。

家に毎月4万入れていたが、残りは使える状態。

ソフトも数多く保有していた。


そんな私だが田舎に来てからというもの。

何とゲームの話題、話せる人物がいなかった。


当然皆『マリオ』くらいは知っている。

でも。


どうやら田舎の人たち、そう言う遊びよりもなぜか対人スキルが非常に高かったのだ。


つまり遊びと言えば出かけたり、バーベキュー。

さらには登山にツーリング、後はなぜかゴルフ?


冬場など皆でスキーなどを計画するような人たち、つまり『陽キャ』が殆どだった。


陰キャ属性てんこ盛りの私は戸惑う。

何しろお一人様好きなのに、夜な夜な消防という訳の分からない軍隊もどきに召集され、さらには青年団と言う意味不明な組織の会合。


そして夜遅くまでゲームをしたい私を邪魔する早起き野球。

集合朝の5時って。


まだ18のわたくし。

キャパオーバーですよ?


さらにはまるで狙ったかのように届く結婚式の案内状。

もちろん新郎新婦、面識なぞございません。


「ばあちゃん、体痛いんだよ。代わりに行ってくれるかい?」


あの状況、『嫌だ』と言える人はいない事だろう。

泣く泣く私は礼服に身を包み、知らない人たちとともにバスに揺られて行きました。



※※※※※



あの当時我が職場は週休1日。


土曜日は半ドン(えっと、お昼までってことです)

一応カレンダー通りで祝日は休日、だったのですが。


つまり貴重な日曜日。


そんなこんなで潰されていく悲しい現実。

辛かったことを覚えております。


で。


やっと迎えた5月のゴールデンウイーク。

意気揚々と、何故か母の知り合いのスリランカ人から買った怪しげなスバルの『レオーネ』と言う車を走らせ、茅ケ崎に里帰り。


久しぶりに会うゲーム仲間たち。


帰りの車で道路がにじんで見えていたことを思い出します。



※※※※※



先にも触れましたが。

田舎の若者たち、やけにアグレッシブなのです。


と言うかですね。

彼等は実に保育園からのお付き合い。


すっげー仲いいんですよ。

他人が入れないほどに。


まあね。


人口の少ない『へき地』で生活していた彼等。

きっと自己防衛の意味もあったのだろうけど…


新参者には辛かったのですよ。


何しろ少し話が盛り上がれば出てくるのは思い出話。


「あのときさー」

「ああ、そうそう」

「お前あれ、よく食えたよなー」


うん。


よそから来た私は隅っこで、『早く解散にならないかな』と常に思っておりました。


それでもね。

私は頑張った。


青年団室、実は大きなテレビが放置してあったのです。

だから私、ゲーム機を持ち込み、皆に問いかけました。


「ゲームしません?ボンバーマンとか、マルチタップもっているので…多人数プレイ、面白いですよ」



※※※※※



まあね。

良いですよ。


うん。


きっと総プレイ時間30分。

早々に私の希望は打ち砕かれたのでした。

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