【短編】理屈じゃない

ずんだらもち子

理屈じゃない 1話

 人を好きになるのに、理由ってあるのか?


 まぁ、……あるよな。


 でも、絶対に必要か?


 一目惚れって、そんなに悪いことか?


 見た目だけ、差別、ルッキズム……。


 いやそんなことない。


 容姿だけで好みかどうか判断するなら、動画とか雑誌で見かけるアイドルとか、確かにそうかもしれないけど。


 でも違うんだ。津栗さんに初めて出会った時、その、こう……どんって胸を殴られたような衝撃があったんだ。


 それからはもう、つい教室の中でも津栗さんのこと探しちゃってるし、ずっと彼女のこと考えてて……でも、それだと変態というかストーカーというか、ヤバいなと思って。

 授業とか部活に集中しようとするんだけど、また三歩歩いたらもうまた考えてて……。


 もうこのままだと俺はおかしくなってしまう。この気持ちを、津栗さんに伝えるんだ――!





「――どうして私なのだ?」


 いや、だからその、一目惚れっていうか、理屈じゃないっていうか。


「それは君の中で言語化できていないだけだろう? 私はそれが聞きたいのだ」


 そ、それは……だから、こう、津栗さんを初めて見た時にこう、胸が弾むような感覚になってさ。


「どうして? 君の脈が一瞬狂っただけじゃないのか? 不整脈かもしれない。大丈夫か? 保健室に行くか?」


 そ、そんなんじゃないよ。


「私の容姿がタイプだったってことか? でも別に、私は学校はもちろん、クラスでも整った容姿な方ではないし、愛想もない。スタイルも標準よりやや痩せてるくらいだ」


 じ、自分で言わなくても……てか、容姿で選んだわけじゃないって。


「だが一目惚れなんだろう? ということは容姿くらいしか判断する要素、ないと思うのだが」




 ――め、めちゃくちゃ理屈くせえええええ!




「それにどうして校舎裏なんかにわざわざ呼んだのだ」


 そ、それは人目に付きたくなかったからだよ。


「なるほど。おや、きちんと理由が説明できるじゃないか」


 そ、そりゃどうも――。


「だがどうして人目に付きたくないのだ? 私に告白している姿を見られたくないということか?」


 先に理屈言い始めてるし。みんなの前でやるもんでもないだろ告白なんて。選手宣誓じゃねーんだから。


「今どうして選手宣誓のくだりを言ったのだ?」


 ぎゃ、ギャグだよ。ウケると思ったんだよ! 場が和むと思ったんだよ……。


「どうして和ませる必要があるのだ?」


 いやだってギスギスしてるっていうか、ピリピリしてんじゃん。


「別に私は苛立ってなどいない。ただ質問してるだけだ。さっきの人目に付きたくない理由もそうだけが、君はもしかして最初から諦めていないか?」


 そ、そこまで悲観的には考えてないけど、絶対成功するなんてうぬぼれてもねえよ。


「ダメだな。何事に挑戦するにおいても、弱気はダメ。まずはそこから出直してきなさい。来週の日曜日にもう一度聞こう。待ち合わせ場所は10時に駅前東口。じゃ」


 ……いや、最後の理屈じゃ無くね?


 え、ていうか来週日曜日って……。


 今これ、俺どういう状況?

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