第4話

「いつもありがとう、助かってる」

北音が村瀬家に俺を引き取りにやってきた。相変わらずダサい私服なので多分記者には不審に思われないレベル。

「いいよ、犬好きだから。そういえば、セブンさ、テレビに出てたよね?」

「そう、ペット紹介しなきゃだったからね。思ったより好評だったよ、うちのアイドル」

「そっか、俺今からアイドル預かるんだ。責任持ってかわいがります」

「そうだよ、アイドルのアイドルなんだから崇めなよ」

あ、俺アイドルのアイドルなんだ。なんだそれ、神じゃん。

「というか相変わらず私服どうにかなんないの」

「犬を預かるのに着飾る必要はないだろ」

「そうだけど…あれ、何その指輪」

ももちゃんはそっと左手の薬指に触れる。

「…ここだけおしゃれしてんの?右手とかにしたら?」

「結婚指輪は左手の薬指だろ」

「…結婚するなんて言ってたっけ?」

「この前正式に届出したんだよ、ごめん、言ってなかったけ?じゃあ報告ですね。この度倉橋北音は結婚いたしました」

ももちゃんはアイドル。作り笑顔は得意。

「そんな、知らなかったよー!もう、そういう大事なことは早く言わないと!彼女いることすら知らなかったって。独身だと思ってたからセブンの世話とか色々頼んでたけど、もう大丈夫!お母さんとかに頼むから!なんだ、もう、おめでとうじゃん。おめでとう!」

ももちゃんはアイドル。予想外のことも臨機応変に対応する。

「もう会うのやめよっか!」

ももちゃんはアイドル。ファンを一番に思っている。

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