今までのこと

 初めての時はここは夢ではなく現実だと感じた。

 寝て目が覚めたらここにいた。

 それが私達の共通認識だった。

 この時は皆バラバラで、私は1人で行動して、少しずつこの世界にいる彼らと出会い、共に行動していく。

 急に飛ばれてやってきた未知の地に私は不安と恐怖でいっぱいだったが、彼らと出会い、少しずつ安堵してきた。

 けれど、この街には恐怖が潜んでいた。

 それは化け物。

 草野君など若い子はクリーチャーと言っていた。

 私はクリーチャーという単語自体が初耳だったので名前と勘違いしていた。

 どうやら、ああいう映画やゲームに出てくるような化け物をクリーチャーと呼ぶらしい。

 映画やゲームに出てくるといっても私はそういう映画やゲームに無頓着である。

 そのクリーチャーは肌はなく、筋肉むき出しの体で、まるで白い皮付きの鶏肉が人型になったようなもの。大きさは2メートルだろうか。クリーチャーは基本腰を曲げ、猿のような四つ脚歩行であった。舌は異様に長く、巻き付かれると逃げることは難しい。それとトカゲのような尻尾もある。

 爪が太く、そして鉤爪であるため、鉄さえも豆腐のように崩す。

 そして私はそのクリーチャーに喰われて死んだ。

 夢とは思っていなかったせいか、目が覚めると私は狂乱状態だった。

 娘になだめられ、なんとか正気を戻した。

 二回目。

 私は逃げた。

 手近にあった車を使って、この街から出ようとした。

 けれど、どれだけ走っても住宅街。この街からは逃げることが出来ず、最後は私はクリーチャーに喰われて死んだ。

 三回目。

 即自殺。喰われて死ぬなら楽な死をと考えて。

 けれど、すぐに死ぬと一定時間が経でば蘇ってしまうようで、私は生き返ってしまい、奴らに生きたまま喰われた。

 四回目。

 私はこの世界に囚われた彼らと再び出会い、情報を共有し、それからは共に行動することにした。

 五回目以降は待ち合わせ場所の公園で集まり、そしてこの街を調べ始めた。

 勿論、最後はクリーチャーに喰われて終わる。

 私達がこの街を散策して知ったことは、この街には人やペットなどの生物はいないこと。生きているのは私達5人と数匹のクリーチャー。

 街には名前はなく、永遠続く住宅街。ただ、ずっと同じ景色というわけではなく、北側には役所と図書館などの公共施設があった。けれどこの街の名前については何一つ分からないまま。

 北西にはスーパーがあった。値札がなく、商品が棚に陳列している。

 北東には警察署や消防署。

 東には小学校と中学校。

 南東には保育園、老人ホーム。

 南には墓場と火葬場。

 南西には病院。

 西はまだ未踏。

 文字だけなら普通の街に聞こえるかもしれないけど、この街の構成は異常だった。

 まるで住宅街にマンションや一軒家の代わりに施設を置いただけのようなもの。

 やはり現実とは違う街。

 どうして私達はここに?

 私達は何をすればいいのか?

 分からないことだらけ。

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