「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」

mynameis愛

第1話

 朝、目が覚めるなり、豊(ゆたか)は大きくため息をついた。


 「またか……。」


 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 夢の内容はいつも同じ。


 自分が突然、国王に即位する。


 そして、大臣や騎士たちが集まる中、ド派手なマントを羽織らされ、玉座に座らされる。


 「陛下! 本日より、国の命運はあなたにかかっております!」


 「えっ、いや、僕、王様向いてないですって!」


 「何をおっしゃいますか! 陛下は“選ばれし者”なのです!」


 「選んだやつ誰!? 競争とか嫌いだし、権力争いとか絶対ムリだから!」


 だが、夢の中の豊の意見は一切通らず、国の行事に連れ回される。


 しかも、何が一番ツラいって……


 夢なのに リアルに疲れる ことだ。


 これが1回だけならまだしも、9回目ともなると、さすがに「もうええわ」と言いたくなる。


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