八昼夜

 夢を見た。


 彼女はいない。どことなくあきらめを伴いつつ、外に出る。


 街中を探し回っていると見覚えのあるバーをみとめる。中に入れば、下品な笑い声。多くの男たちに囲まれた摩耶ががぶがぶと酒を呑んでいた。金に染めた長い髪に濃い化粧をした彼女はマナーもへったくれもない様子で、ボトルをラッパ飲みしている。その間、男たちに胸や尻やあそこを絶えず触れられていたが、毛ほども気にする様子はなく、むしろ媚びるようにして声を上げる始末。


 そしてフラフラになった摩耶は数人の男たちに運ばれ、バーカウンターの更に奥に連れて行かれる。後を追えば、止められることなく通され、そして、複数人の男と楽しげに交わる彼女を死んだ心で眼差し続け……


 /


「な〜に見てんだよ、気持ち悪い」

 酒焼けした声とともにゴミを見るような目をこっちに向ける摩耶に、恋人のことを見て何が悪いんだよ、と返せば、彼女は、

「そのオドオドした感じが気持ち悪いつってんの。○○○付いてる?」

 はっきりとした侮蔑を交えた笑みを向けながら、荒々しく斑に染まった金髪を掻く。

 最近の摩耶はおかしいよ。拳を強く握り込みながら絞り出すように告げれば、途端に舌打ち。ガンと机に膝をぶつけながら立ち上がった摩耶は俺に背を向けて玄関の方に足早に歩いてく。

 どこに行くんだよ、と尋ねれば、

「散歩だよ散歩。キモいやつと同じ空気なんか吸いたくねえし」

 などと告げて、すぐさま外に出ると、後ろ手で玄関扉を乱暴に閉めた。

 自然と溜め息が漏れる。何をどう間違ったんだろうか?

 


 


 

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