一昼夜

 夢を見た。


 気が付けば隣に摩夜がいない。家中を探してもどこにも見当たらず、たまらず外に飛び出した。

 

 夜空の下をどれだけ駆け回っただろうか。見覚えのある女のシルエットをみつけてほっとする。声をかけようとしたところで、摩夜の傍に背の高い人影がいるのをみとめる。筋肉の付き方からして男だろうか? 一瞬、声をかけるのを躊躇ったところで、ちょうど灯りに照らされる彼女の横顔。その頬は紅潮しているように見えた。


 /


「変わったこと? 別にないけど」

 どうしたの? 尋ね返してくる摩耶に、なんでもないと応じた。

 夢の中で感じた不安がなかなか薄れず、思わず聞いてしまった俺に対しても、摩夜は優しい。

「なんだかよくわからないけど」

 おっとりとした声音の直後、唇と唇が合わさる。そのほんの一瞬が終わったあと、いい大人なのに変かなと、照れ笑いする彼女。

「私は太星たいせい君の味方だから」

 かぎりない柔らかさとともにそう告げる摩耶の言葉は心の奥にじーんと響いた。

 

 

 

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