未来予知を使う友人
まめでんきゅう–ねこ
勝利が確定した日
「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」
そう言ったのは、
それでも有島は彼の事を信頼している。故に何かあったか尋ねた。
高島が言うには、最近同じような夢を見続け、9回目の朝、その夢の内容が現実に起こるとの事。
さすがの有島も爆笑した。
「ふははははははははははははははははははははははははははははははらははははははははははははははははははははははははは。」
「えぇ…笑いすぎだろ、よく息保つな。」
「マジで言ってんの?なら今日の朝、何が起きたの?」
高島は窓を指差して言う。
「夢ではスズメが、いつか失くしたタッチペンを届けに来たんだけど、今朝…本当にスズメがペンを咥えて届けに来たんだ。」
「へぇ?良かったねぇ…。」
「信じてないだろ。なら今夜見るであろう夢が9日後に実現するか賭けようじゃないか。」
「良いよ来いよ。もし実現しなかったらアイス奢りね。」
次の日。
「昨日見た夢は、ガキ大将の
高島が言い、有島がメモした。
そして8日後、2人は公園でスマホを見ながら遊んでいると…。
誤利裸くんがイライラしながら歩いているのを見かけた。
どうしたのかと聞くと、彼は答える。
「さっき知らん犬に頭突きされたんだ。すげぇ石頭だったから、めっちゃ痛えんだよぉ。」
高島と有島は顔を見合わせた。
「ほら本当だろ?アイスちょうだい。」
「ったく、しゃーないな。」
有島の考えはこれだけでは終わらなかった。
この高島の予知夢を上手く利用すれば、世界最強の人間になれるのではないかと…。
例えば9日後に起きる事件を事件が起きる前に解決したり、珍しい動物の出現場所を把握したり、なんなら投資だって可能かも。
有島は高島に夢で何を見たか毎日話すよう言った。
次の日。
高島が見た夢の内容は、同級生の
時間は次の土曜の朝9時18分。この辺は閑静な住宅街なので、土曜の朝の方が人が少ないのだ。
有島は早速、家へ帰るとカレンダーを用意し、その事を書き留める。さらに泥棒をその場に拘束するための道具なども準備した。
泥棒を退治して自分の手柄にすれば、市から表彰されるかもしれない…と考えたためである。
8日後。
栩義くんの庭を覗くように、有島は外壁の陰に隠れる。
あと1分で9時18分だ。この日のために早寝早起きを徹底し、朝からフルパワーで戦えるよう体を鍛えてきた。
表彰されたら親に回転寿司へ連れていって欲しいとお願いしようか…いやいや、クラスでモテモテになるぞぉと考えていると、いつのまにか9時18分に!
有島は息を殺して、ひたすら庭を監視する。
特に怪しい人物はいない。
19分になった。まだ誰も来ない。栩義もまだ起きていないらしい。
20分になった。さすがに我慢の限界だ。
顔を上げて栩義の家の庭へ入り、武器を構える。
結局、その日は誰も来なかった。栩義は1日中寝ていた。
暇なのか…と有島は心の底から叫びたくなった。
月曜日、高島含む友人たちがゲラゲラと教室で笑っていた。
教室へ入った有島が、彼らの元へ駆け寄り、何が面白いのか尋ねる。
すると高島がスマホの画面を見せてきた。
「本当に信じてたんだね、有島くん?」
スマホの画面には、有島の後ろ姿が。この写真は土曜の朝9時18分に撮られたもの。
背後から撮影されていたのか。
「え、どういう事?」
疑問に思う彼に、高島は悪そうな顔で答えた。
「どうせ君の事だから、僕の言う事を信じちゃうと思ってたよ。
だから、9時18分に泥棒が入る夢を見たって嘘をついて、君を騙したんだ。」
「え……じゃあ予知夢は嘘だったのか⁉︎」
「いや、予知夢は本当。」
「じゃあ9日前に、本当はどんな夢を見たのさ。」
「君が大事な大事な土曜を無駄にするという内容の夢だよ。」
「ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ。」
よく考えてみれば、予知夢というものを信じ込んでしまい、貴重な土曜日を無駄にしてしまった。
予知夢というよりも、夢で見た内容を現実で起こした…という事になってしまった。
ゲラゲラと有島の後ろ姿を撮影した写真を見て笑う友人たち。
有島は惨めになってしまった。
未来予知を使う友人 まめでんきゅう–ねこ @mamedenkyu-neko
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