ネイル男子、プロを目指す!
クロクマせんぱい
第1話:工業高校生、ネイルに目覚める!?
和歌山の工業高校電気科の二年生、藤堂颯太は、実習が終わるのを待ちながら、無意識に指先を見つめる。
「ネイルサロン行くのがめんどくさくてさ、自分で塗るんだけど、ムラになるんだよねぇ」
昨日のバイト先で、おばちゃんのそんなぼやきを聞いたのが気になっていた。見せてもらった爪は、確かに塗りムラだらけで、表面の仕上げも悪く、ざらざらしていて適当に塗ったって感じだった。
(こんなん、俺のほうがもっとうまいことできるんちゃうか?)
細かい作業は得意だ。
中学の頃からシルバーアクセを自作していたし、電気工作で細い配線を繋ぐのも好きだった。
シルバーは研磨剤で仕上げるけど、爪もそういうの使うんやろか?それとも、磨き方が違うんか?仕上がりにはこだわるタイプやし、ネイルも同じように丁寧にやれば、うまくいくんちゃうか?
「家帰ってやってみよか…いや、どんな感じになるんやろな?」
そう決めると、思わず口元が緩んだ。けど、そのまま周りを見渡して、すぐに背筋を伸ばし、表情を引き締める。なんとなく、誰かに見られたくない気がした。
「お前、何ニヤニヤしてんの?」
友人に軽く小突かれ、慌てて「なんでもない」と笑ってごまかす。
放課後、家に帰るとすぐに机に向かった。工具箱から耐水ペーパーを取り出し、そっと爪に当てる。
「爪も金属みたいに削ったらツヤ出るんちゃうか?……いや、やりすぎたらあかんやろな」
そんな軽い気持ちで磨き始めた。最初は順調だったが、調子に乗って力を入れすぎた瞬間——
「うわっ、やりすぎたやん…!」
削りすぎて爪の表面が薄くなり、指先にズキッとした痛みが走る。
「アホやなぁ……」
失敗した。
けど、
削る前よりも爪の表面はツルツルしている。
「…… ちゃんとやったらキレイにできるんちゃう?」
指先をじっと見つめる。痛みと興味が入り混じるこの感覚——
(なんか、おもろいかもな。次は、もうちょい慎重にやってみよ)
まさか、俺がこんな爪じっくり見つめる日が来るとはなぁ……。
次回、『桜庭瑞希との出会い』
「男の子がネイル?おもしろいやん」
颯太の前に現れた、先輩・瑞希。彼女の一言が、颯太のネイル人生を大きく動かすことになる。
あとがき
ネイルは単なるファッションではなく、心を癒やす手段の一つ でもあります。
綺麗な爪を見ると気分が上がるのはもちろん、福祉ネイルやフットケアでは、高齢者や体の不自由な方の 生活の質を向上させる効果 もあるんです!
本作では、颯太が 「ネイルで誰かを笑顔にする」 というテーマに向き合いながら、試行錯誤する姿を描いています。
ネイルの施術や資格試験の内容をなるべくリアルに描くよう努めていますが、実際の現場や試験のルールとは異なる部分があるかもしれません。
また、ネイル技術は進化し続けており、トレンドや施術方法も時代とともに変わっていきます。
「あれ?実際とはちょっと違うかも?」と思われる部分があっても、温かい目で見守っていただけると幸いです!
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