俺の親友が少し怖い

きの狐🍄

第1話 10回目の挑戦🧹

 「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」


 ルディがぼんやりと呟く。


「夢……?何で9回目って分かるん?」


 向かいの席に座るエリオスが、昼食のスープをかき混ぜながら尋ねた。


「夢の中の俺が『お前、もう9回目だぞ!?何?ふざけてんの?それとも重力と仲良しなの? 見てるこっちが泣きたくなるわ。』って、ガチで怒ってた。」


 ルディはパンをちぎりながら答える。


 スープをすすろうとしたエリオスの手が止まった。


「それは……大変だな。」


 沈黙が降りる。


 窓の外では、空飛ぶ箒の訓練が行われていた。青空の下、新入生たちがふわりと浮き上がるのを、ルディは羨ましそうに眺めている。


 空飛ぶ箒の試験か……。


 確か、最初の試験でルディが悲惨な目にあったのは覚えている。


 僅かに浮き上がったかと思った瞬間、地面に叩きつけられる。何度も。


 正直、どうやればあんな風になるのか分からない。


「他には何か言われた? その……夢の中の自分に。」


 エリオスが慎重に言葉を選びながら聞く。


 何か、恐ろしいことを言われてそうで怖い。


「その前は『いい加減学べ!!運動神経どうなってんだ?8回もやって成功しないとか、もはや才能だろ!』って言われた。俺的には運動神経は関係ないと思うんだけど……。」


 エリオスは、こののんびりした友人が少し怖くなった。    


「ほ、他には?」


「『10秒浮いているだけでいいんだ!!なのにお前は落ちる。もしかして魂だけが浮遊してるのか!?』とか。」


「…………」


 10秒浮くだけでいい。それは、新入生が最初に受ける箒のテストだ。


 エリオスはスープを一口すする。温かいはずのスープが、なぜか冷たく感じた。


「……で、10回目のテストはいつになりそうなん?」


「明日。」


 エリオスは、音を立てて立ち上がる。


「今すぐ、行ってこい。」


「え?」


「新入生と一緒に箒の基礎を学んで来い!!」


 強い口調で言い放つエリオス。


 ルディは驚いて相手の顔を見る。


「いや、無理だって……テスト明日だよ?」


「やらなきゃ、夢の中の自分にまた罵倒されるんだぞ!?」


 ルディは顔を上げる。


 そうだ。10回目こそ何かが変わるかもしれない。


 ……いや、今度こそ変えてみせる。


「わかったよ。」


 そう言って、彼は席を立った。


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俺の親友が少し怖い きの狐🍄 @kinokokokoo

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