【KAC20254】いつかは、ミニPC

めいき~

後何回目に出会えるの?

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 自分の部屋をみて溜息を零す、とにかく狭い部屋で机等は置き場もない。頭を抱えていても仕方がないので掃除だけでも試みる。とは言っても特に広くもなく物がある訳でもないので一番手間がかかったのはPCのキーボードぐらいではあるが。


 自分の机でも殆どスペースが無いのは、遅い癖に無駄に場所をとっているPCのせいもあった。友人曰く、ミニPCを買え。それで随分スペースが節約できるぞと言われ鼻息荒く買いに行ったものだ。




 (最初だけは)



 というのも、当然ミニPCと言うのだからミニである事を求めている。機能拡張ボードと称して段々デカくなっていくそれを見た時、思わず古の負けハードの末路を頭に思い浮かべてしまった。これが一回目。


 次に、店を変えたら違うのがお薦めされるんじゃないかと思い弁当箱サイズのPCが出て来た時これだよこれ! と思い動作を見せてもらう事に。

 結果は酷いものだった、なんせ通常の状態からファンが煩すぎて。にぎやかな店内ですら結構嫌な大きさの音がず~っとなりっぱなしなのだ。これでは、普段使いとかしてたら俺がストレスで死ぬ。これが二回目。


 三回目は、友達の由香が新しくパソコンが欲しいと言うので見に行った時。俺は運命の出会いを果たしたのだ。殆ど無音と言える静穏性、そこそこのスペック、サイズもスマホ程度と多少分厚いのはまぁいいとしても概ね理想通り。


 ケースが一種類しかなく、ガワがロリ魔法少女系極まる代物で無ければ間違いなく手に取っていた。流石に幼馴染とは言え、オタクでない女の子と買い物にきてこれを手に取るだけの勇気は俺には無い。つか、これほど短いとスカートの意味さえ怪しい。これを手に取った瞬間、俺は社会的に終わるそう確信した。


 帰った後、全力で買いに戻ったが既に売り切れた後だった。←


 四回目は、前回の失敗を踏まえ。必ず一人で行動している時のみ探し、またしても俺は運命の出会いを果たす。ガワは黒一色、静穏性、そこそこのスペック、サイズ感全て合格だ。俺はそれを手に取りふとある事に気がついた。


 ストレージが無い……?


 OSはどうやらマザーに直付けされた所に入っているらしいが、別途ハードディスクやSSDをお買い求め下さいと注意書きがあった。無論ストレージを買えばいいんだが、またしてもそれをやったらスペースを節約するという俺がこれを買う意味が消滅してしまう。


 五回目の話をしよう、俺は近所で探す事を諦め。新幹線に飛び乗り遠征した。場所はあとま商店街。パソコン専門街といえる程の競合店ひしめくあの地ならば、俺の理想が見つかるに違いない。確かにあった、俺の理想のミニPC。カタログの見過ぎか情報収集のし過ぎか毎日夢に出てくる。


 そう、見つかった。ついに見つかった、今度はちゃんとストレージもある。俺は念入りに落とし穴が無いかチェックした。そして、今回も落とし穴を見つけてしまった。


 ポートが無い!


 そう、電源コネクタや画面に繋ぐためのHDMIはある。なのにUSBが殆ど無い。どうやってキーボードとマウスを繋ぐねんワレと叫びそうになるのをのどまで出かかったのを必死で押さえ込み仕様書を確認した所。Bluetoothなる無線で繋いでくださいとの事、俺の持っているキーボードとマウスは有線だ。追加費用を考えると買う事ができない。ここまで新幹線で来ているからだ、もしこれが近所で見つかっていれば買う事が出来たかもしれない。


 俺は、由香におみあげを買うとその地を後にした。由香におみあげを渡し、母親には何も買っていかなかった事が後でバレて叱られる事になった。


 納得いかねぇ←


 そろそろ飽きたかもしれないが、六回目の話をさせてくれ。俺は、再び近所で探す事にした。前回の失敗を踏まえてだ。新幹線に乗って、予算が足りなくなったのが良くなかった。今回は貯金を積み上げ、戦地へと赴いた。


 そして、あったのだ。天は俺を見捨てなかった。

 スマホより一回り小さく、手に収まるサイズのパソコン。ノートPC用メモリで拡張も可能、白一色のガワと俺の理想を全てクリアしていた。


 今度はUSBも六個以上ある、見事だ。これならばとお値段もチェックし、予算内である事を確認。ついに俺は毎日夢にまで見たミニPCを手に入れ……とした所でまたしても気づいてはいけない事に気が付いた。


 有線LANがないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!


 そう、Wi-Fiの表示はあるし高速通信にも対応している。だが、有線ポートが無い。よく見れば周りのミニPCも軒並み有線ポートがないのだ。


 使えねぇ! 確かに時代は無線の方がいいだろう、それは認める。だが、OSが天下のマイマックロであり続ける限り必ず不具合をやらかす。歴史が物語っている、その時すがるものはローテクでなければならない。じゃなければ安心して使えない!!


 俺は、項垂れながら店を後にした。


 七回目、実店舗ではらちが明かないと天下の通販サイト電脳怠惰にアクセス。

流石だ、流石だよ電脳怠惰。実の所通販には運搬リスクやら様々なリスクがあって怖くて仕方がないがそれでも追い詰められていた俺はここで探す事を決意した。


 そして、あったあったのだ。


 やっと俺の理想通りのミニPCがっ! とよく見るとCPUのロゴがトリの降臨するマークに……。


 俺は思わず、画面を拳で割りそうになる。


 そう、悪名だかい問題児のCPUだった。ハードの不具合で熱暴走を起こしやすく、界隈では焼き鳥CPUなどと揶揄される。どれだけ、素晴らしく魅力的な製品でもこのCPUをつんでいるモノは無料でさえ嫌がられる。


 何故なら、外側のパーツを巻き込んで部品ごと融解するからだ。


 そして、八回目。それはもう半分以上諦めかけていた時偶然見かけた。

 これがパソコン?!というポスター、小ささをアピールする写真。


 それが、百円のガチャガチャのポスターでなければもっと良かった←


 そう、俺は自分の理想のミニPCの夢を。


 あの夢を見たのは、これで9回目になるんだ。


 今度こそは、素晴らしい出会いであってくれ。そう願う。

 そういって、俺は店に入っていった。


<おしまい>

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