Now and Then

川線・山線

第1話 はじめに

とある朝、私は夢を見た。夢の内容はもう忘れてしまったが、中学時代の同級生の女の子が夢に出てきたことは覚えていた。目覚めたばかりのぼんやりした頭で、彼女のことを思い出していた。あまり関わりのない子だったからである。


そういえば、高校時代に、私と彼女が同じ電車に乗っていたことを思い出した。お互い降りる駅が異なっていたので、「降りるのに都合のいい場所」も異なる。私の場所と彼女の場所はそれなりに離れていたことを思い出した。


彼女はかわいい人で、何度も「おはよう。いつもこの電車に乗ってるの?」と声を掛けようと思ったが、その一歩が出せなかったことを思い出した。高校に通い始めてすぐなら、まだ「同級生だった」という言い訳はできたのだろうが、時間を経るごとに、ハードルは高くなっていく。結局彼女に話しかけることはできなかった。


もし声を掛けていたからと言って、人生が大きく変わったのか、何も変わらなかったのか、それは分からないなぁ、とぼんやりしながら考えていたら、ふと、“I saw her standing there.”という文章が頭に浮かび上がった。そう、ほぼ毎朝、私は、彼女がいつもの場所に立って、列車が来るのを待っているのを見ていたのだ。


単純にその話題だけを書こう、と思ったのだが、このフレーズ”I Saw Her Standing There”と言えば、ビートルズのデビューアルバム“Please Please Me”の1曲目の題名である。この曲の始まりのカウント”One, two, three, four!“が、歴史的事実とは異なるが、「ビートルズ時代」の幕開けのカウントのような気がしてならないのである。


そんなこんなで、ビートルズの「オリジナルアルバム」としてCDでは扱われている14作のアルバムから、レコード1枚につき1曲(なので、ホワイトアルバムからは2曲)えらんで、駄文を書いてみた。全くの創作もあれば、自身の経験や身の回りの話をmodifyしたものもある。選んだ曲は、「嫌いな曲」は入っていないが、それぞれのアルバムで「最も好きな曲」を選んだ、というわけでもないことは承知いただきたい。


ビートルズ後期の作品は、歌詞そのものがストーリーになっているので、少し苦心した。


文才のない男が、手すさびに書いたものである。読んでいただければ、大変ありがたいことである。

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