ブッ「んおー」夢日記

　あの夢を見たのは、これで9回目だった。

　おじさんが屁をこいている夢。

　ブッという切れ味抜群の破裂音と、おじさんが「んおー」という声を上げて顔を赤らめてケツを抑えるというただそれだけの内容だ。ただそれだけの夢なのだが、それによって僕は起きてしまうのだった。だから一日の始まりを僕はブッ「んおー」なんかで始めなければならなかったし、一日の終わりも、「ああ、明日はブッ「んおー」で始まってしまうのだろうか」という一抹の不安にさいなまれながら睡眠に入らなければならなかった。

　だが、必ずしも毎日ブッ「んおー」の夢がくるわけではない。そう、この夢を９日連続で見ているわけではないのである。僕は別の夢も見ていた。しかしまたこれが印象に残る夢だった。

　それはおばさんがゲッとゲップをして、「はあ！」と青ざめる夢だ。この夢はすでに６回見ている。先ほどのブッ「んおー」と比べて、ゲップ自体、見る側としてはそこまで気にならないものだ。誰にだって空気が漏れてしまうことはある。しかもまだ口から発射しているのだから嫌悪感も少ない。

　しかし、演者側はそうはいかないようである。彼女は恥ずかしがるのではない、青ざめるのである。まるで間違って息子を刃物で刺してしまったかのような、そんな絶望感、自分が自分で無くなってしまったような心理をまことしやかに表情に出しているのである。

　それにより、僕は一日の始まりを暗いニュースを見たときのような気持ちで起きなければならなかったし、寝るときはまた彼女が過ちを犯すんじゃないだろうか、あるいはブッ「んおー」が来るのではないかという不安と共に寝ないといけなかった。

　これ以外にも他の夢を見るときもあったし、夢の無い日もあった。しかし、僕には少し物足りない。なぜなら若いお姉さんがうどんの汁をすすり、満面の笑みで「ほお」とため息をつく夢を一度見ているからだ。この夢を見れば、今までのブッ「んおー」やゲッ「はあ！」で溜まった精神的苦痛は帳消しとなる。

　まあ、このようにいろいろな夢を見ているのだが、ふと思った。もしかしてこの夢、パターン化しているんじゃないか？　そう思ったのは必ずといっていいほどブッ「んおー」は２回連続でやってくるからだ。そしてその後高確率でゲッ「はあ！」がくる。僕は９回目のブッ「んおー」から毎日見た夢の記録をつけることにした。そして解き明かしたのだ。この夢のサイクルを。それが以下の通りである。

ブッ「んおー」ブッ「んおー」ゲッ「はあ！」

ブッ「んおー」ブッ「んおー」ゲッ「はあ！」

チクッ「いたっ」ピチョンッ「つめた」ピリッ「からあ～」

「なまぬるい」ザバーン！「なまぬるい」ザバーン！「なまぬるいんでんなー」

「なまぬるい」ザバーン！「なまぬるい」ザバーン！「なまぬるいんでんなー」

ブッ「んおー」ブッ「んおー」ゲッ「はあ！」

ブッ「んおー」ブッ「んおー」ゲッ「はあ！」

チクッ「いたっ」ピチョンッ「つめた」ピリッ「からあ～」

「父さん！」「なんや？」「母さん！」「なにい？」「ポチ！」「わおーん」

「父さん！」「なんや？」「母さん！」「なにい？」「ポチ！」「わおーん」

ロボットが　お料理を　運んでいます　そこを　どいて　くれませんか

ロボットが　お料理を　運んでいます　そこを　どいて　くれませんか

ロボットが　お料理を　運んでいます　そこをどいてどいてどいてどいてどいてどいてどいてどいて……

It's a Show Time!

ブッ「んおー」ブッ「んおー」ゲッ「はあ！」

ブッ「んおー」ブッ「んおー」ゲッ「はあ！」

チクッ「いたっ」ピチョンッ「つめた」ピリッ「からあ～」

ブッ「んおー」ブッ「んおー」ゲッ「はあ！」

ブッ「んおー」ブッ「んおー」ゲッ「はあ！」

チクッ「いたっ」ピチョンッ「つめた」ピリッ「からあ～」

「なまぬるい」ザバーン！「なまぬるい」ザバーン！「なまぬるいんでんなー」「父さん！」「なんや」

「なまぬるい」ザバーン！「なまぬるい」ザバーン！「なまぬるいんでんなー」「母さん！」「なんや」

「あッ……」ブリッ！

ジュルルッ「ほお」