可愛らしい、柔らかな文体が導入の衝撃を不思議なほど和らげ、詩的かつ幻想的な雰囲気へ導いてくれました。
また終始この文章のリズムが崩れることなく安定しているので非常に読みやすかったです。
さりげなく挿入されるパロディも自然で上品でした。笑わせながらも世界観を壊さず、作者の遊び心が伝わってきて心地よいです。
自ら命を絶ってしまった原因、異世界について、敵の存在についてなど、世界観の秘密を物語のなかで自然に明かしているだけでなく、読者に知らせるべきタイミングで行うことでそれらが最大限の効果を発揮し、読者を離さない工夫がされていました。
自分が好きなものを小説にするとき、どうしても自分の妄想をそのまま文章にしてしまう傾向にあると思いますが、本作はきちんと読者目線に立って、緻密な計算のうえで書かれたことが読んでいて伝わりました。
自嘲気味な主人公と、胡散臭いけど信用できる雰囲気のある沖田総司のコンビとしてのバランスが良かったです。
この二人の化学反応を見てみたいという思いが強く、次々とページをめくってしまいました。
また、キャラクターが物語の都合で動かされたり喋らされたりしておらず、自分の意思で動き、自分の言葉で喋っているのが好印象でした。
長くなってしまいましたが、端的に言うと文章、構成、キャラ、全部が良かったです。