妖精の森の秘密

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第1話

 スコットランドの山奥に、古くから「妖精の森」と呼ばれる場所があった。深緑の木々が立ち並び、鳥のさえずりが響く静寂な森。私はその森を訪れるのが好きだった。


 ある秋の午後、いつものようにサイクリングを楽しんでいた私は、木々の間から漏れる不思議な光に気づいた。好奇心に駆られて近づくと、そこには小さな妖精が座っていた。銀色の髪と虹色に輝く目を持つ彼女は、私に微笑みかけた。


「こんにちは、人間さん。私はエラです。ここに来るのは初めてですね?」


 驚きながらも、私は彼女の優しい声に安心感を覚えた。


「はい、初めてです。ここはとても美しい場所ですね」


 エラは立ち上がり、私に森の中を案内してくれた。彼女は木々や花々に触れながら、自然の神秘と美しさについて語った。その姿は、まるで森と一体化しているかのようだった。


 途中、エラは小さな木の枝を折り、それを私に手渡した。


「これは特別な木の枝です。持っていてください。何か困ったことがあったら、思い出してくださいね」


 その日以来、私は頻繁に森を訪れ、エラと会うようになった。彼女は自然と調和することの大切さを教えてくれた。人間の世界では当たり前だと思っていたことが、実は自然を傷つけていたことに気づかされた。


 エラとの出会いは、私の人生観を大きく変えた。自然を大切にし、シンプルな生活を心がけるようになった。都会の喧騒から離れ、森の中で過ごす時間が増えていった。


 ある日、エラは私に告げた。


「あなたはもう十分に学びました。これからは自分の力で歩んでいってください」


 悲しみに包まれながらも、私は頷いた。エラが去った後も、彼女がくれた木の枝は私の部屋に飾られている。それを見るたびに、エラの教えと森での思い出が蘇る。



 ◆



 時が経ち、私は作家としての道を歩み始めた。自然と人間の共生をテーマにした物語を書くようになった。そして、その物語は多くの人々の心に響いた。


 エラとの出会いから数年後、私は再び「妖精の森」を訪れた。木々の間から漏れる光を見つけ、期待に胸を膨らませて近づいた。そこにエラの姿はなかったが、風に乗って優しい声が聞こえてきた。


「よく戻ってきましたね。あなたの物語を通じて、多くの人が自然の大切さを知りました。これからも、その想いを伝え続けてください」


 私は微笑みながら、深く頷いた。エラとの出会いが教えてくれたものは、今も私の中で生き続けている。そして、これからも物語を通じて、その教えを多くの人々に伝えていくのだと、心に誓った。

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