第24話 朝立ちのリュウ

 気持ちの良い朝日が大山リュウを優しく起こす。

「ん? もう朝か……、……二度寝しよ」

「おいおい、待て待て、起きろ起きろ!」

俺は翼をバシバシと当てコイツの二度寝を阻止した。


 「イタタタ……、わかったよ、起きますよ起きます! あれ?」

大山リュウは気が付いた様だ。

「やっと気が付いたか……」

「ロードお前、デカくなりすぎだろ……」

「違うわバカ、お前が小さくなったんだよ。てか自分の姿をちゃんと見ろ!」

「こ、これは……」


 そこに1人の男がいた。年は20代前半ってところか、生前の大山リュウそっくりの人物が立っている。ドラゴンらしくギザギザの歯が目立つ。




「どうだ、お前の人間形態の姿は? これと言って特徴無かったから歯をサメみたいにギザギザにしておいた。あと転生前のたるんでた肉はカチカチの筋肉に変えといたぞ。更にマキにモテるために遺伝子を書き換えておいた。おめでとう、これで君は今日からマキ専用フェロモン分泌機だ。」


大山リュウは涙が溢れ出ていた。

久しぶりの人間の姿、10年ぶりの人間の体、ドラゴンの体が染みついて仮面ライダーアマゾンみたいな手を戻せず、涙を拭う行為がワイルドだ。


「ありがとうロード」

「たく、こんなにサービスするのは滅多にないんだからな……」

「ありがとう、……けどよもっと早くに出来たんじゃ……」

「さあ、お前のラブストーリーの始まりだ。俺は遠くから見守っているからな……」



 大山リュウは「ありがとう」と言ってギリギリ二足歩行で、マキのいる村へ走って行った。もう少しだけ待てば人間姿にも慣れるのに、あんな四足歩行から二足歩行に進化した初期人類みたいな走りをしてたら馬鹿にされるぞ。


「あ」


しまった、ついうっかりしてしまった。


「まあ、いっか、それはそれで……」


 



「きゃああああああ」

「変態よ、全裸、フルチンだわ」

「あら、ご立派だこと♡」


 マキのいる村から女性陣の悲鳴が周りの山々に響き渡る。

昨夜コイツのスキルをいじくった際に【服生成】みたいなスキルを与えるのを忘れてしまった。大山リュウは人間になれたのがよほど嬉しかったのか、全裸のまま村まで来てしまったのだ。まあ、気が付かなかったアイツのせいでもある。


全裸の男は取り押さえられてしまった。

見世物のように村人たちに見られるリュウ、その中にマキの姿が見える。


「マ、マキ、おれだ、その何て言うかその……」

全裸男リュウは必死に彼女に助けを求めた。

「え? マキちゃんの知り合い?」

「いえ、知らないです。気持ち悪い……」

マキは捕まっている変質者を見捨てた。



 「リュウの『マキィィィィ』と死に物狂いの泣き叫びは最高に面白かったぁ」

俺は腹を抱えて笑った。やはり大山リュウは面白い、果たしてこれからの2人の恋の行方はどうなっていくのやら見ものだな!


「おい、なんで服を用意してくれなかったんだ!」

「悪い悪い、嫌ホント、忘れてたんだよ。これは本当だ!」

よそ者で全裸のリュウは捕まっている。

怪しい以外の何者でもない男に俺は謝っていた。

「いやホント……ゴメン、思い出したらまた笑えてきた……」

「ふざけな! まあ、調子に乗ってた俺に落ち度がある。せっかく人間にしてくれたのに悪いな、八つ当たりして……」

「いいさ、こっから巻き返せばいい……グフッ」

「まーた笑いやがった! あ~どうしよ、マキに気持ち悪いって言われた。」

「グフフフフッ あの目はヤバい」

「てか、おれいつまで全裸なんだよ……」

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