第20話 紅林マキ
勢いよく流れる滝の水音。本来美しい自然によって生み出される音に、1人と複数人の枝を踏む音、ガサガサと枝に当たって出される音が邪魔をする。
女はガラの悪い男達から逃げていた。見た所人さらいの連中だろう。
「まて、逃げんじゃねぇ!」
「大人しくしやがれ!」
「あまり傷つけんなよ、価値が下がる。」
人さらいの男は三人、片手に大きな剣を持っている。
一方の逃げている女は腕から血を流し、涙を流しながら必死に逃げていた。
山道の足場が見えずらい夜道だ、女は必死に逃げていたがつまずいて倒れてしまった。勿論、人さらいどもはこのチャンスを逃す訳がない。女の上に馬乗りになり彼女の腕をロープで縛っていく。泣きわめく彼女に男が「うるさい」と黙らせるために殴る。
「おい、顔は止めろよ……」
「すまん、ついうっかり手を出してしまった。」
「あ~こんな山奥まで来ちまった。 どうしてくれんだ、あ?!」
もう1人は腹部に蹴りを食らわせた。
「おいおい、お前ら……」
「なんだよイイじゃねえかよ」
「……ところでよ、売り飛ばすならコイツの味見しないとな」
男は女のスカートの中に手を伸ばし下着を脱がそうとする。
女は必死に抵抗するが、もう一人の男に殴られ大人しくなってしまった。
その時、強風が吹き溢れた。風は魔力を帯びていた、女と人さらいどもを隠す様に生えていた邪魔な草木は、彼女らを中心になぎ倒されたのだ。そのせいで卑猥な光景が月明かりに照らされ、上空からはっきりと映し出される。
「登場のタイミングばっちりだな」
「ちょ、ちょっとこの後の展開も見て見たかったけど……。女の子が泣いているんだ、この男たちは許せない。」
リュウの奴はやる気満々だ。
時々来るハンターや冒険者と比べれば、こんな奴らどうって事ないのだ。
「おいおい、コイツってまさか、近くの山に住んでいる」
「ドラゴンだ、何でこんな所に?」
「
ドラクエルの名は有名だ。生前暴れまわっていたからな……
中身は変わっているが大山リュウはドラクエルの力を持っている。ドラクエルみたいに狂暴ではないし、周りの事を気にしながら戦うクセがあるので、生前よりも弱いかもしれないが……
「キエエエエ!」
人さらいの男がリュウの頑丈な皮膚に切りかかる。
しかし、剣はバキンと豪快な音を立てて折れてしまった。
そう、レベルが違い過ぎるのだ。
【名前】 大山リュウ 【種族】 ドラゴン
【年齢】10〔68〕【職業】なし【レベル】85
【称号】・紅龍・異世界人
【HP】900【MP】400
【攻撃力】700【防御力】700【魔力】200
【素早さ】100【魅力】3【運】80
【スキル】・火属性無効・竜の鱗・火の化身・炎の加護
スキル【竜の鱗】によって、そこらの剣じゃ傷一つ付かない。
自分たちとの差を知った人さらいどもは大慌てで逃げ出した。
「フンッ 一昨日きやがれ!」
「……お前は本当にやり返したりしないんだな」
「ああ、クソ野郎だし、許せないが人を殺めたらイケないって婆ちゃんに言われて育ったモンで、それに最近おれのことを襲うやつが減ってきているのもこのおかげだと思っている。」
そう、大山リュウは人殺しをしない。
強者の余裕か知らんが、転生先の体に感謝するんだな。
男たちが去った後、リュウが「大丈夫ですか?」と声をかけるが、彼女はコイツのデカさにビビってしまった。酷く落ち込んでしまったリュウを慰めた後、ドラゴンと比べたら鼻くそサイズの俺が女の側に行って女に優しく声をかけた。
「よう、危ないとこだったな俺は三つ足のロード。こっちのデカいのは、元
「えーと、召喚と似たような感じですか?」
服装から見るにここら辺の村か里の子だろう、この辺りじゃ転生者の存在は認知されていないようだ。
「兎に角、あのドラゴンがアンタを助けたんだお礼でも言いな」
「え、あ、はい……」
女はゆっくり、ゆっくりと大山に近づく。
女は大きく、硬いゴツゴツした皮膚に優しく触れる。
女は小さな口を開けて名を伝える。
「私の名は
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