第17話 裏切者カリーナ・リフャルド

 時折カイ、アデリナ・グランハート、シュメル・オルレアンの3人の死体で辺りが真っ赤に染まっている。赤黒く変色し、鉄分臭い匂いが俺の嗅覚を刺激してくる。


「先ほど何をしていたのだ。三つ足のロード、まさか本当に三本目の足を持っていたとは知らなかった。神の使いだの、悪魔の手先だの言われているが、貴殿の目的はなんだ。」

魔王幹部四怪人の1人であるドット―ルは、俺が最後カイにやった事に対し質問してきた。ステータス確認能力を使えるのは異世界の者と俺だけ、しかも本人と俺しかステータスを見ることが出来ないのだ。

ドット―ルには俺が足で空を蹴っていたようにしか見えていない、だがその後にカイが慌てだしたものだから、何かやったのだろうと気になってしょうがないのだ。

「まあ、折角なんでな、ちょいと貰っただけさ……」

「……まあ、いいだろう、貴様が魔王様の知り合いという事に免じて見逃してやろう」

なんでお前なんかに見逃されなきゃいけないんだ、なんでコイツは上から目線なんだ? 色々と言いたいが今日は面白いモノが見れたので、見逃してやることにした。



 ドット―ルが物陰に向かって歩き出す、物陰には耳を塞ぎながらブツブツと念仏を唱えていた少女の姿があった。カリーナ・リフャルドだ。

ドット―ルは女の前に立ち顔を上げさせた。カリーナは酷い顔をしていた、これから殺される絶望に塗りたくられた顔ではない、後悔と罪によって生まれた悲しみの顔だ。


「おお、カリーナ・リフャルド。貴様の仕事ぶりは実に素晴らしいものだったぞ。魔王様もお喜びになるだろう。貴様との約束である呪いの除去叶えてやろう。」

カイが殺された理由、何故魔王幹部が直々にこの場所に来たのか、それは全てこの女が仕組んだことだったのだ。



 勇者召喚の儀式が成功した噂はその日に国中に広まった。しかし、魔王のいる地に届くには多くても数日は掛かるはず、にもかかわらず魔王軍はいち早くその情報を手に入れていた。カリーナが内通していたのだ。

 ドット―ルは勇者が召喚されるまでの間、ずっとディレスティア王国付近に滞在することは出来ない。カリーナから報告を受けたドット―ルが急いでディレスティア王国に向かうも、何せ距離がある、何処か別の町に行かれたりしては厄介だ。

そこでドット―ルは一緒に同行させ、勇者たちがこの国から出ていくのを阻止させた。ドット―ルが来るまでの間、確実に襲撃できるようにと


「なるほどね~、やっぱりカリーナはあの時、ドット―ルから指示を受け取っていたのか! じゃあ、あの男は悪魔崇拝者なのか!? おい、ドット―ルあいつはどんな願いを言ったんだ?」

「ん? 異性にモテたいと……」

「ギャハハ、下らねえ!」

「ああ、実に下らないが彼もよく働いてくれた。一応、異性にモテる呪術をかけておいた。 これで子供老人にもモテモテだろうな。」

「そいつがロリコンでないことを願うぜ! あと、貴族の女に手を出さない事を……」



 「さて、話が逸れてしまったな。お前に掛かっていた呪いの事だが、あれは消すことは出来ない。」

その言葉を聞いた瞬間、カリーナが「話が違う」と涙ながらに訴えた。それに対し、悪魔は落ち着いた物腰で説明を続けた。

「まてまて、お前の呪いはちゃんと解いてやる。ん? 言っている意味が分からないという顔だな、正確に言うとお前の呪いを他のリフャルド家の誰かに移してやるという事だ。別に良いだろう? お前は一族の恥とまで言われていたのだから。」

ドット―ルはカリーナに対し高圧的に攻めている。

しかし、呪いが解けないなんてよく言う。本当は今後の為に自分が使えるかもしれない駒が欲しいだけなのに、この哀れなカリーナのような人形が。


「まあ、最後の生き残りの君に言っておく。ここは受け入れたほうがいいぜ、まあお尋ね者にはなるし、2度とディレスティア王国に戻れないが、その呪いが解けるならいいだろ! 寿命が延びると考えれば良いんだよ!」

「……そうね、でも呪いを移すのはクソ兄弟や、叔父様達に限定して頂戴。私みたいな物心ついていない子に移さないで! アナタがちゃんと説明しなかったのだからこのくらいのお願いは聞いても良いはずよ!」

ドット―ルはニヤリと笑いその願いを聞きいれた。



 カリーナがドット―ルに殺されたカイたちの元に行く、あまりの悲惨さに口から嘔吐物を吐きながら、泣いて誤った。そして勇者カイの武器である聖剣を腕に抱え、ドット―ルのペットのドラゴンと一緒に魔王の元へと向かう。

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