第15話 魔王幹部ドット―ル
魔物と同じ血のように真っ赤な目、人の肉を食うために尖った歯、背中から生えた大きな蝙蝠の様な翼、簡単に皮膚を切り裂けそうな鋭い爪、ピシッとしたスーツが自身の凶悪な体を一層目立たせていた。
「あ、悪魔……」
シュメルが声を震わせている。
そう今勇者一行に立ちふさがっているのは悪魔だ。人が狂気によって変化したモノではなく、空気中の魔素から自然発生した生物である。そして魔物と同じく目が赤く、人間を襲う存在である。
「一体なぜ、悪魔がここにいるのだ。いや、そんな事よりもカイ殿大丈夫ですか?」
シュメルが倒れているカイを無理やり立たせた。
「名を名乗れ、悪魔ならそのくらいできるだろ!」
矢を構えながら敵の悪魔に名を聞く。
「下等な存在が、図が高いぞエルフが私は魔王様に仕える四怪人が1人、悪魔族ドット―ルである。そこに突っ立ている勇者カイを駆除しに遥々この地にやって来たのだ。感謝しろ。」
「自然発生した存在が自分たちの事を族だと? 笑わせる」
アデリナは負けじと鼻で笑ったが、その声にはドット―ルに対しての恐怖が入っていた。悪魔のドット―ルは地に降りた後、上空にいる俺の事を見ながら「確かにいるな」と呟いた。
「シュメル、カイを連れて逃げろ……」
カリーナがシュメルに指示を出す。
アデリナは【危機察知】のスキルは無い、だがあの悪魔と自身の実力の差は理解できているようだ。しかし、若造のシュメルは「一緒に戦いましょう」と首を振った。
「アデリナの言う通りだぜ、今のお前らじゃコイツには勝てない。」
そうコイツの力は序盤辺りに出てくる敵のステータスじゃない。
【名前】 ドット―ル 【種族】 悪魔
【年齢】なし【職業】・悪魔【レベル】90
【称号】・魔王幹部・呪術師・暗殺者・黒魔術師・大魔法使い
【HP】750【MP】999
【攻撃力】80【防御力】50【魔力】800
【素早さ】500【魅力】100【運】150
【スキル】・魔素吸収・熟練闇魔法使い
・絶対の契約・気配遮断・魔王の加護……etc
どう転んでも勝てるビジョンが浮かばない、もしかしたら聖剣の力でワンチャン、いや無理だな。アデリナの言う通りこのステージは早すぎる。
「おい、ロード、貴様そちらの肩を持つのか? 貴様は中立の立場じゃないのか?」
ドット―ルが俺に聞いてきた。「知り合いなのか?」とアデリナが聞いて来る。その通り、俺はコイツを知っている、というより魔王と知り合いだから部下のコイツもついでに知っているという訳だ。友達の友達みたいな関係である。
「ああそうだぜ、おれは中立の存在だ。だが流石にチュートリアル中のこいつ等に、いきなり中ボスのお前が来るのは可哀そうだろ? 少ない時間とは言え一緒に暮らした仲だしな!」
「助けるのか? こいつ等を?」
「いや、あくまでアドバイスするだけだ。」
「そうか、邪魔はしないのだな……」
ドット―ルはそう言って右手を前に出した。
「おい、アデリナ伏せた方がいいぞ」
「え?」
「
次の瞬間、ドット―ルの右手から血の斬撃の嵐がアデリナをバラバラに切り刻んだ。ドット―ルの得意魔術、『
相変わらずダラダラと自分の流れる血を見て、息を切らしながら興奮しているド変態野郎だ。
「うわああああ」
男二人の悲鳴声が誰もいない草原を駆け巡る。
目の前で仲間がバラバラになって殺されたんだ無理もない、カイなんて本当に勇者かってぐらい、みっともなく敵に醜態をさらしている。
「さて、残りの2人だが……」
ドット―ルが2人に近づいていく、一歩、また一歩、近づくコイツの姿は魔王と言っても違和感のない圧倒的な強者のオーラを放っていた。そんな敵に対し、勇敢にもシュメルが剣を構える。
背丈はほとんど一緒なのに、まるでアリとゾウが比べられているみたいに見えてしまう。シュメルの手元はドット―ルが近づくのと比例して震えが大きくなっていった。
「あああああああ!」
瞬間、シュメルは叫んだ!
かつてないほどの声を叫び、今ある自身の全力の力を出す。
誇りである剣を投げ捨て、敵に背を向けて全力で走り去る。しかし残念な事に盛大にコケてしまい、運悪く投げ捨てた剣が首に綺麗に当たってしまった。
ギャグマンガみたいな奇跡はシュメルを楽に殺そうとはせず、数秒苦しませた後、大量出血によりシュメルは息を引きとった。
「おいおい、カリーナが面白いモノ見れるって言った事はこの事か?! こんな奇跡あるかよ! いや、奇跡って綺麗な言葉でいうのもあれだが……」
俺は大笑いしてしまった。久しぶりにこんなにも笑えた。
カリーナに感謝しないとな!
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