第13話 3人の冒険者
勇者一行はスライム討伐の後、他にも数件簡単な依頼をこなした。
「今日は結構稼いだんじゃないか?」
服を土だらけに汚したカイが仲間たちに聞く。
「ええ、皆さんよく頑張りました。これだけあれば別の町までの運賃は稼げましたね。」
同じく汚れた姿のシュメルが嬉しそうに答えた。もう初日の頃の不安で一杯だった彼の顔は何処にもなかった。アデリナもカイが真面目に励んでいる姿を見て、言葉には出さないが嬉しそうにしている。
「なあ、お前たちもギルドカードを作ったらどうだ? 何かと便利だし、依頼もランクが上げれば難しい依頼も受けられるようになる。」
アデリナがカイたちに冒険者になる案を持ち掛けた。カイとシュメルはこの案に賛成の様だが、カリーナだけは反対していた。
仕方なく、とりあえず今回はカイとシュメルの2人のギルドカードを作った。
【名前】
【年齢】16【職業】・剣士【ランク】F
【名前】 シュメル・オルレアン 【種族】 人間
【年齢】19【職業】・剣士【ランク】F
2人のギルドカードが出来上がった。
「初めから、作っておけばよかったですね。」
「ああ、一文無しになる前にな! カリーナは何で作んないんだ? もっと金貰える依頼受けることが出来るんだぞ!?」
カイがカリーナに聞くと彼女は反論する。
「別に三人いればパーティとして認められて、B級依頼も受けられるのよ。B級なら結構いい報酬貰えるし……。そもそもこの辺りにB級並みの依頼なんてないけど。」
「だが、4人いないと自身のランクの依頼が受けられない。それに別の町に入る際の証明書にもなる。私もそれ目的でギルドカードを作ったのだ。」
カリーナの問いに対しアデリナが自身の経験を踏まえて薦めるも、それでも必要ないと彼女は断った。
すっかり日は落ち、どこまでも続く闇がディレスティア王国を包み込む。
カイたちは汚れてしまった服を綺麗に洗った後、宿屋の近くにある巨大な銭湯に向かった。この世界では風呂に入るという行為は贅沢なのだ。
今回は依頼を何件かこなしてそこそこ手持ちに余裕が出来たという事で、「湯あみをしよう」とカリーナが誘ったのだ。
扉を開けると白い湯気が裸になった体者達を出迎える、その先の湯舟にゆっくりと疲れたからだを沈める2人。
「いや~、仕事後の風呂は最高だな!」
「ええ、心が浄化されていくようです……。カイ殿何をしているのですか?」
カイは何やら壁を調べ始めた。どうやら女湯を見る為に何処か穴が開いていないか調べている様だ。全くどいつもこいつもやることは同じだ。よじ登ってまで見ようとしないだけましか……
「ロード殿は一緒に入ってよろしいのですか?」
「ダメに決まってんだろ、内緒だ内緒!」
しばらくするとしょんぼりしたカイが戻って来た。どうやら穴はのぞき穴は無かったらしい。当たり前だ……
「まあ、おれなら男女の壁は無いから行けるけど!」
俺は羽を使って隣の女湯に行った。
「あ、ずるいぞお前!」
「よう、お嬢さん方! イタイタッ……おいおい物投げんなよ。別に欲情したりしねえよ。て、何で更に怒るんだよ!」
カリーナが傍に置いてある桶を俺に向けて投げてきた。
人間じゃないのに俺……
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