第11話 カリーナの秘密

 魔物と化したゴブリン討伐を終えた勇者カイ御一行は、町へ戻りギルドから報酬金を受け取っていた。報酬金は一先ず、シュメルが管理することになった。

カイはもう信用を無くしているし、散財癖のカリーナに預けるのは論外だ。アデリナは面倒だと言って断るので、消去法でシュメルになった訳だ。

「カイ、お前が良いというなら、私が弓使いアーチャーの職業を教えてやろうか? このままでは何もできないぞ。」

アデリナが親切心でカイに提案を持ち掛けた。人付き合いが苦手なアデリナが唯一教えることができるものらしい。たしかに、ギルドカードにも書いてあった。

しかし年頃の男だ、カイはプライドが許せなかったのか、今日アデリナと口論して気まずいのか、せっかくの誘いを断ってしまう。

「カイ殿、でしたら私が剣術を! 私はまだ未熟者でアデリナ殿のように、職業伝授できる程ではありませんが、基礎なら何とかお伝え出来るかと……」

シュメルの親切心がカイのプライドを更に抉っていく、とうとうカイはそのまま何処かへ行ってしまった。


 「カイ殿は大丈夫でしょうか? このままでは先行きが危ぶまれる」

シュメルが心配になってアデリナに聞いている。アデリナもどうしたらいいのか分からないお手上げ状態だ。

「なあ、お前らカイの事追いかけなくていいのか? あいつここら辺の土地勘があるとは思えないのだが?」

2人はあっそうだったみたいな顔をした後、すぐに勇者様を探しに行った。

この俺様を使って!



 このディレスティア王国は広い、探すだって一苦労だ。本気を出せば簡単に見つけられるのだが、気晴らしに探しながらこの町をぶらぶらと散歩することにした。

「そう言えば、カリーナの奴はどこ行ったんだ?」

俺はついでにカリーナの事も探すことにした。あの女は1人でいる時が多すぎる。一体何を隠しているのやら……


 ディレスティア王国城下町は勇者召喚の日と比べて、活気が無くなった気がする。いや元に戻ったと言った方がいいだろうか? 

俺はあえて人気のない湿った場所に向かった。お嬢様のカリーナはこんな薄暗くて昼間っから飲んだくれた男や、薬中が転がっている場所なんて行く訳がないと、仲間の3人は思うだろう。

だが俺は違う、俺の勘がそう言っている。


 「お! いたいた!」

噂をすればあの女を発見した。彼女は何やら男と話している、風貌からして彼氏とかじゃなさそうだ、貴族の出のカリーナが身体を売っているハズもない。


 ではなんだ?


俺は男がいなくなったところを見計らってカリーナに突撃インタビューした。

「おいおい、お嬢さんこんな所で何やっているんだい? まさか、金目的に男捕まえてたのか? あんまりハメ外すんなよ!」

俺は馬鹿にするように質問した。何故ならこうした方が……

「そんな訳ないじゃない! 馬鹿にしないで! 私はただ……」


 残念、否定するため答えが喉仏の所まで来ていたのに……


カリーナはマズいと思ったのか、早歩きで俺から逃げ出す。


 面白くなってきた!


俺はしつこくこの女に聞く、もうカイを探す事なんてどうでもよくなていた。それよりも。この女の方に居た方が面白そうと思ったからだ。

「なあなあ、何隠してんだよ! そんなに言えない事か?」

「うるさいわね、何でもいいでしょ! ……皆には黙っておいてくれる?」

「さあ、どうしようかなぁ?」

面白いので更にからかってみたら、面白いことに更にキレ出して来た。

「あんた、なんなのよ私たちの事を飼い犬みたいに後ろから付いてきて、アンタこそ一体何が目的なのよ!」

「俺か? 俺は面白いモノが見れたらそれでいいのよ。この世界娯楽が少ないだろ? お前ら人間どもと違って俺は食欲も睡眠欲も性欲も無いんだ。」

そう言うと、女は「あっそ」と言ってそっぽを向いた。

その後だ、少し経った後に気になる台詞を放った。

「もし黙っててくれたら面白いモノみれるよ」と……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る