第6話 金なし貧乏パーティー
ディレスティア王国を出ると、広大な草原地帯が広がっている。
隣町に行くためにはこの草原地帯を抜ける必要がある、本来ならば定期的にある馬車に乗っていくのが一般的だ。特に最近は魔王のせいで魔物の出現率が増えているから尚更だ。
「-なので、護衛として……」
「いやね、その勇者様御一行のお願いとは言え、もう他の冒険者の方々にお願いしているのでね……」
魔物対策として、運搬や旅の護衛として冒険者や腕の立つ者を雇うものだ。
魔物が増える、イコール冒険者を雇う人員が増える、もしくは優秀な冒険者を雇うことになるため、その分運賃も高くなる。
シュメルは困っていた、カリーナが散財してしまったせいで、隣町に行くまでの運賃がなかったのだ。せめて護衛という形で乗ろうとしたが、既に頼んでいたようで断られてしまった。
「なあ、シュメル、もういいじゃねえか!」
呑気に励ますカイ、シュメルの苛立った顔が彼に対しての今の評価なのだろう。
「そ、そうよ、そうだ冒険者組合に入らない? それがあれば色々と便利だし!」
「金は?」
シュメルは呆れた口調でカリーナに聞いた。「え?」と言った後、彼女は「何か問題でもあるの?」と逆に聞いた。
そう、冒険者組合に入るにも金が要る。温室育ちのお嬢様のカリーナにはそのことが分らない、シュメルはこの旅に出る前にいろいろと調べているから、そのことを知っていた様だ。
「え?! じゃあこれからどうやって生きていくのよ!」
「だから、それについて考えている!」
カリーナの問いに対してシュメルが怒鳴って答える。
流石にヤバい状況だと悟ったカイが、こうなってしまった原因のカリーナ追い詰め始める。
「そもそも、カリーナが原因だろ!」
「な、だって、アンタがお金使っていいって言ったから……」
「俺はこの世界についてよく分かってないんだよ! お前らがそういうのしっかりとやってくれよ! 体売るなりなんとかして金を稼いでくれ!」
最低な提案にカリーナはドン引きしてしまう。そしてウルウルと目に涙が浮かんできている。
ぐちゃぐちゃな空気を換えてくれたのは、ずっと無言を貫いていたアデリナだ。彼女はスッとプレートを3人に見せた。彼女が見せた物こそが冒険者カードだ。彼女は冒険者でもあったのだ。つまり、
「これがあれば依頼を受けることが出来る! しかもAランク!」
彼女のカードにはこう書かれていた。
【名前】 アデリナ・グランハート 【種族】 森人
【年齢】不明【職業】・弓使い・幻術師【ランク】A
【職業伝授】・弓使い
「あんまり詳しく書いてないんだな……」
勇者カイがボソッと喋る、俺が見せた自身のステータスと比べたら、そう感じてしまうのは仕方がない、この世界の連中はここまでしか分からない、そもそも調べる術がないのだ。
「幻術師なんてめずらしい特技持っているのね……、せっかくなら魔法使いとか僧侶の事学べばマジックアーチャーになれたのに……」
カリーナが勿体無さそうにアデリナに聞くと、彼女は別にいいだろとそっけなく答えた。
「何はともあれ、これで依頼を受けることが出来る。しかもA級、ズルになってしまうが、アデリナ殿に1人でⅭ級の依頼を受け取ってもらい、それを我々4人でこなせばいいのだ。アデリナ殿本当に感謝する!」
シュメルは感謝のあまり涙を流している。
さっそく主人公一行はこの国の冒険者ギルドに向かった。
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