第5話 現実

親の都合でこんなことになってしまったけれど、受験生って言ってたから、せめてちゃんとした物食べてもらって、勉強に集中できる環境は作ってあげよう。

朝起きて、まだ見ぬ弟に対して思ったのはそんなことだった。


いつ来るかも聞いていなかったことを思い出して、ママに連絡しようとして、やめた。


ママは自分のために出かけたことが一度もない。

取材や、出版社へ打ち合わせに行くか、義理で出席するパーティ以外、基本家に引きこもっている。

自分から、漫画以外のことでどこかに、しかも旅行に行くなんて初めてのことだった。

だから、文句を言いはしたけど、わたしのことなんか忘れて、楽しんで欲しいと心から思った。




掃除と洗濯を済ませて、夜ご飯の買い物に出かけた。


高校生の男の子って、バカみたいに食べるはず。

好き嫌いがわからないから、定番の唐揚げをメインに夕飯のメニューを考えることにした。



祥太くんって、どんな子なんだろう……


全12巻を一気読みしてしまった漫画「僕たちは嘘をついていた」の中に出てくる「弟」は、大人びてるけど生意気なイケメン高校生だった。


まぁ、現実的に考えて、それはないか。

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