決戦

魔女っ子★ゆきちゃん

決戦

1 妖精に注意!


 放課後、家に帰ろうとした僕に、こけゆき先生が

「トシユキ君、妖精に注意だよ!」

と声を掛けてきた。

 唐突な発言だった。まあ、それが"こけゆき先生"の平常運転だと言える。

「妖精? 妖精のあてなんて……」

 『ない』と言い掛けて、思い当たるふしがあった。南さんだ。妖精使いフェアリーテイマーにして、精霊使いエレメンタラーでもある潮江南うしおえ みなみさんは、自由自在に妖精を呼び出したり出来る、らしい……。

「じゃあ、今日は南さんに近付かないように……」

「うん、そうだね。みなちゃんから護衛用に妖精を借りるべきだね」

「は?」

 妖精に注意しなければならないのに妖精を借りるなんて、水難の相が出ているのに泳ぎに行くようなものじゃないか?

 僕がそれについて提言しようと思ったところで、

「あ、ルサちゃんだ♪ お〜い」

と手を振りだした。

 見ると、確かに金髪きんぱつツインテ碧眼へきがん腹ぺこ死神の姿が見えた。今日は、カップラーメンらしきものを食べながら歩いている。相当な高確率で何かしらを食べている。にも関わらず

 気が付いた腹ぺこ死神がこちらにやってくる。

「どうかしましたか?」

「あのね、トシユキ君が妖精に命を狙われそうなの。だから、みなちゃんに妖精を借りに行くんだよ」

 腹ぺこ死神は、カップラーメンの汁を飲み干すと、空き容器を僕に手渡してから、腕を組んで『う〜ん』と唸った。

 っていうか、何故に僕にこれを手渡してきたの?

「トシユキさんには無敵の『ドジっ子モード』があるじゃないですか? 如何なる妖精が現れようと恐るるに足りずじゃないんですか?」

 そうだ! この『ドジっ子モード』は、僕攻撃してくるあらゆるを超弩級のドジっ子にしてしまうとんでもディフェンス能力である。

「『ドジっ子モード』はザルだし、今回は通用しないかも?」

 えっ? ザル? 無敵の専守防衛能力じゃなかったの?

「それはその通りなんだけれど、しれっと解除されたりするじゃん?」

 えっ? しれっと解除されるの?

 この間は、『宇宙一の鉄壁の防御を誇る』とか言ってなかった?

「何? 心配なの? 大丈夫だよ♪ 私がついてるじゃん! ついてるツインテール、ぶはっ!」

 ルサちゃんの金髪ツインテールを指差しながら爆笑するこけ☆ゆき先生だけれど、何も面白くねーよ!

 っと、その時! こけ☆ゆき先生のツインテールが天に向かって逆立った!

「誰かが呼ぶ声が聞こえる。ごめん、私、行かなくちゃ!」

 はいはい、天国でも時空の果てでも、行ってらっしゃい!

「うん、行ってきま〜す☆」

 そう言うと、こけ☆ゆき先生は息を大きく吸い込んだ。身体が数倍に膨れ上がる……、っと、なんと身体が爆発して雲散霧消してしまった!

 !?

「えーと……。僕、何しようとしてたんだっけ?」

「南さんに、妖精を借りに行くんじゃなかったですか?」

「あ、そうだった、そうだった。でもなんで? ……。あ、妖精に注意しなくちゃならないから妖精を借りに行くんだった???」

 なんだろう、この違和感?

 女難の相が出ているのに、合コンに参加する男子大学生のような、矛盾した行動をしているような感覚がするんだけれど?

 僕なんかおかしなことしてる?


2 無事に借りられた


「なんで私が君に妖精貸さなきゃいけないのか、意味わかんないんだけれど?」

 釈然としない様子の潮江南さん。

「でも、妖精に注意しないといけないから、妖精を借りに来たのよね???」

 言ってる本人から『ハテナマーク』が飛び出している。

「まあ、良いわ。貸してあげる。その子だったら、そこの野良死神より、よっぽどましな仕事するわよ♪」

「むうっ! 失礼な! この上位死神候補に向かって何を言ってるですか!」

「まあまあ、ふたりとも落ち着いて。南さん、ありがとう♪ 今日一日借りとくね」

 このふたりは、いつもこんな感じだ。仲が良いのか悪いのか?

 まあ、目的は達成したし、帰ろうか。


3 トシユキ君を観察する怪しい影


 ホウ、アイツガ ターゲットノ "トシユキクン"カ?

 アイツヲ ケスナド アカゴノテヲ ヒネルヨウナモノヨ。

 クックックッ。


 続くでしょう、たぶん。


 


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