水晶の樹

塩田

水晶の樹前日譚


 先月、インターネットで都市伝説を発信しているサイトを漁っていると、「山口県下関市の山奥に、何百年も前から水晶の樹があるらしい」という書き込みを見つけた。気になり、他のサイトでも水晶の樹を調べていると、水晶の樹は〈ミズキリノハシ〉というスギ科の一種であることが分かった。そして、下関市だけでなく日本の数ヶ所に実在していて、昔は全国に百本以上も生えていたが、都市開発や管理人の高齢化などの理由で今はほんの三本しか無いのだという。その樹がある場所が、愛知県新城市、山口県下関市、そして、東京都新宿区。新宿は俺の家がある場所。ここなら・・俺は急いで携帯電話と鞄そして大きめの紙袋を持って家を出た。これで、一攫千金を狙える!もう贅沢はできないと思っていた。自分より年下の奴から見下され、「駄目な奴」だと散々罵られてきたが、これであいつらを見返せる!この水晶玉を売れば!!、、、

 日が暮れるまで、サイトにかかれてある場所とその周辺を呆れるほど探し回ったが、結局見つからず俺はその場で項垂れた。そして、あることに気付き嗄れた声で叫んだ。「ここは、どこだ。」


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