第9話 恋と盲目。南夏背。
フォールは自分がイェレナの病室へと入れない事に対しての理由を聞いた
「...ちょうど良い、フォール・グッナイ。こっちへ来てくれ」
鎧を着た男にフォールは連行される
そうして行き着いたのは尋問部屋だった
「なんで私がこんなところに!」
「今君には殺人未遂の容疑がかかっている」
「はぁ!?」
「今回の事件にあたって学園側の防御魔法をテストさせてもらった」
「...」
「あの時のフォールと同じ強さ同じ環境で剣を突き刺したが対象は何一つとして傷ついていなかった」
「...」
「何が言いたいかわかるだろう?フォール・グッナイは賢いと聞く」
フォールには1つの違和感があった
それはあの時のイェレナの意味深な表情だ
そして何よりフォールが刀を突き刺したと同時に感じた微細な魔力の歪み
そうしてフォールは1つの仮説を立てる
(イェレナは私に刺されるためにわざと防御魔法を解いた?)
(でもなんのために?)
「...フォール・グッナイ、おそらく君は近いうちに何かしらの罰を受けるだろう。例え君が悪くなくとも世間は君をよく思わない」
「『平民を嫌った令嬢がトーナメントを利用して殺人未遂を起こした事件』世の人間のほとんどはこのような信憑性にかける話が好きだ」
「そんなの...」
「そんなのまるで」
(ゲームの悪役令嬢のまんまじゃないか)
「...はぁー」
鎧を着た男がため息をつく
「今回はもう帰って良いよ、イェレナもほとんど完治しているようなものだから心配はしなくて良い」
「それにイェレナは君の事を心配していたよ、『フォール様は大丈夫ですか!?』ってね」
「!!」
フォールの顔に笑顔が漏れる
「笑顔が似合うのは良い女だ、君ならきっとすぐにイェレナとも会えるだろう。保証はしかねるけど」
「...はい」
「それじゃ、気をつけてな」
そういい鎧を着た男と別れてフォールは寮室へと戻る
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フォールは部屋へついても気持ちが晴れなかった
「イェレナ...」
フォールはただ推しであり、思いを馳せていた相手を刺した手の感触と罪の意識から逃れることが出来なかった
そうして1人の部屋の中でふと見覚えのある日記が目に入る
イェレナの机の上にはあの日、約1ヶ月前にフォールが取ろうとした日記が置かれていた
そしてフォールはその日記を手に取り1ページずつ呼んでいく
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day1
今日は入学式!校門を入った瞬間にフォール様というとっっっても綺麗な人に押し倒されちゃった!幸せ!
フォール様とはクラスも同じで席も隣だった!
自己紹介の時にいろいろあったけどフォール様が私を守ってくれた!すごくかっこよかった!
フォール様は私の部屋が物置部屋と知ると相部屋を提案してくれた!私は一生フォール様についていくと決めた!
「ふふふ、イェレナったら」
イェレナらしい日記の内容につい笑顔が溢れる
「他には何があるかしら」
day15
今日はフォール様と街でお出かけをした!
day26
今日はフォール様に頭を撫でて貰った!もう死んでも良い
day29
今日はフォール様を1日眺めてみた!やっぱりフォール様はお美しい...!!
そうして日記を読み進んでいくとトーナメント前日のページになった
day31
明日はついに魔法実習トーナメントだ
これまで準備してきた全てが今日のためにある
このトーナメントを通して私とフォール様はついに1つになれるのかもしれない
いや
私はついに彼女と
『南夏背』と1つになれる
フォールは後ろを振り向いた
そこにはいつ入ってきたのか分からないイェレナが立っていた
「みちゃったんですか?フォール様...いや、南夏背ちゃん」
「っ!?」
言葉を出そうにも何も出ない、言いたいことが山ほどあるのに何一つとして出てこない
「口をぱくぱくさせて可愛いですね!何か言いたいことがあるんですか?私は夏背ちゃんのことは全部知っているから何を考えているのか当てますね!」
(なんでその名前を知って!?)
「なんでその名前を知って、ですよね」
「!?」
「あはっ、図星ですね!」
「この機会をまっていたんです、この世界、『及びもしない格差社会』へあなたを連れてきたのは私、イェレナです」
脊髄へドライアイスを詰め込まれた気分だ、今の今まで恋馳せていた相手へと向ける気持ちはなく、ただ1つの不気味という感情だけが存在していた
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