第3話 人をコロコロ親もコロコロ

「それでね?お金が欲しかったからそこそこデカい反社グループの持ってたお宝を強奪してきたの。やばいよね。色々と」

「こんな所でそんな話しないで。ここは私の部屋」

「強かだねぇ…」


リョウを捕まえてしばらく時間が経った。

すっかりここの生活に慣れたリョウは、なんだかんだ私の住んでるマンションよりも住心地の良いこの神社での生活を満喫している。

電気水道ガス、全て使える上に家具も家電も揃ってる。

トイレと浴室は別で、浴槽は私が足を伸ばしても十分のびのび出来る広さ。

しかもお湯は常に補充されてずっと暖かい。

何そのズルい生活。

1人で薄暗い山の、荒れた神社に住むのは嫌だったからほとんど使ってなかったけど…ここは天国か?


「う〜ん…私どうするべきかな?」

「その反社グループにめちゃくちゃに殺されて欲しい」

「ははっ!それは無いよ。アイツら弱いから」

「なら何で困ってるの…?」

「ん〜?そいつらの後ろにいるさらにデカい組織は強いんだよ」


真面目な話、アイツらだけなら何とかなる。

でもその裏のヤーさんが出てきたら面倒だよね。

アレが強いのは100も承知だから。


「正直本気を出せば後ろの組織も潰せる。けど面倒くさい」

「…なら、交渉したら?そして謝罪すれば良いじゃん」

「えぇ〜?何で私があんな連中に頭下げ無いといけないのさ?」

「いや、悪いのはアンタだよ。……そう言えば名前、聞いてなかった。なんて名前なの?」

「聞き方はアレだけど、その肝の座り方は褒めてあげる。私は……そうだね。『レヴィー』と呼んで欲しいかな?」

「…厨二病?」

「違う」


本名を晒すつもりはない。

だから私の力、嫉妬を元に今即興で名前を考えた。

嫉妬の悪魔、レヴィアタンから取った名前。

悪くないと思う。


「はぁ…レヴィーはどうしたいの?」

「面倒事を潰したい」

「…カチコミでもしてきたら?」

「ええ?現世に証拠は残したくないよ」

「…なら逃げたら?」

「それは癪だね。あと舐められる」


逃げるのは癪だし、舐められるのはもっと癪だ。

…ならやっぱり潰すか。

何かそれに向いてる力は……ああ、そうだ。

昔『偽装』の能力を持ってる奴から力を盗った事あったっけ?

バレるときはバレるけど…証拠を消す間の時間稼ぎにはなるはず。


…それでアイツの死体も隠せば良かったね。


「よーし。じゃあひと仕事してこようかなぁ?」

「ついでに私を解放」

「しなきよ。そこで大人しくしてなさい!」


強かなリョウを軽くあしらって立ち上がると、結界玉を使って外へ出る。

そして、記憶を頼りに私がお宝を強奪した反社グループの拠点へやって来た。


「おっす!おら強盗!全員首置いてけ!!」

「な、なんだこい―――」

「なっ!?テメ―――」

「いきなりなにしやが――――」


騒がれても面倒なので、突撃して次々と反社グループの首を切り落とす。

こいつらは弱いから、特に怪我を負うことも逃がすことも無くあっという間に殲滅しできてしまう。

ものの2分で30人以上居た社会の掃き溜め共を掃討し、後処理の時間がやって来た。


金目の物は全て頂き、証拠になりそうな物は全て回収、死体は纏めて結界玉の中へ放り込んで、後で処分する事にした。

持ち物だけでなく、金庫とかにあった物も全て漁ってみたけど…大したものは無かった。

まあ、元からそんなに強いグループでもないし、後ろにいるデカい組織か別の反社グループに奪われてたのかもね。

よし!なら後ろの組織を潰しにいくか!


「リョウちゃ〜ん!外のアレ何とかして?」

「……おぇっ…」

「あー…グロに耐性が無い感じ?」


結界玉の中にやって来ると、リョウがトイレに引きこもっていた。

中からは苦しそうな声と嘔吐の音が聞こえ、何が起こっているのかは想像に難くない。

これは期待するだけ無駄だね。

仕方ない、私が片付けよう。


死体を雑に引っ張って山の奥へ持っていくと、その辺に放り投げて処分する。

私もこの世界を完全に調べ尽くした訳じゃないから正確な事は分からないけど、少なくともこの山には野生動物が生息している。

もちろん狼や熊も居るわけで、そいつらに処分させようと言う魂胆だ。


30人分の死体を運んで山奥に捨て終わる頃にはリョウが外に出て来ており、血で汚れた地面を枯れ枝でつついていた。


「ジョウロか何かで水を運んで流しておいて。景観が悪くなるから」

「……」

「聞こえてる?おーい?」

「聞こえてる…」

「なんだ。ちゃんと返事してくれないと困るよ。それに何か怒ってる?」


口調に怒りを感じる。

リョウに恨まれるような事は…まあ、沢山してるけど今じゃないはず。

何で怒られてるんだろう?


「じゃあこのままさっきの奴らの後ろにいる組織も潰してくるから、見たくないなら神社の中に居てね?」


返事を待たずに結界玉を飛び出した私は、血の海と化した反社グループの拠点を出ると、こいつらの後ろの組織の所へ行く。

偽装の能力である程度バレないようにしておいたので、まあ大丈夫だろう。

もし生き残りが居たら…まっ、その時はその時だ。

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