スロ男

この世の終わり、そして始まり

 海が全て干上がり、魚は死に絶えるという噂がちまたを席巻していた。そんなのはただのデマゴギーだと文化魚は言い、まさにこの世の終わりの始まりだと某新書作家は「ノストラ ダムの大予言」をあらわしベストセラーとなった。

 それを素朴に信じた、博士の魚があった。彼は干上がった土地でも生きられる魚、半人魚ディープ・ワンを生み出すべく、夜に寝るのを惜しんで日がな実験をしていた。

「やめてください、肺が乾いて死んでしまいます」

 乾いたプールに放り出された少魚しょうねんが息も絶え絶えに訴える。が、博士は聞く耳を持たず、わずかばかり内に残る水分を吐き出させるべく、棒で少魚の腹を突つきに突いた。

 そしてついに。

 がぼぉ、と引っ込んだエラは、肺となり、ここに半人魚は誕生したのだった。



 その頃、海の底の都で眠る、水棲の神が目覚めた。陸地の大半は海に犯され、人類は滅亡した。そして、半人魚も死んだ。



 けれど、所詮いまの現世うつしよ外なる神アウター・ゴッドの見る夢に過ぎない。

 人の生き死にや、魚の行く末など、全ては泡沫うたかたの夢——なぜならば、この世界は、我ら旧支配者グレート・オールド・ワンズのものなのだから。



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スロ男 @SSSS_Slotman

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