本作は、ミステリーのように物語が進行します。
現象が起きた理由。
起きた事柄関連する要素。
学校の七不思議を集めることで物語が展開するのです。
読み進めると、一つ一つ怪異の成立ちと起きた事象の真相が解かれる。
本作を読む者は、その過程と謎の解明に惹きつけられることでしょう。
読み解く主人公、自称霊能者という夜雲志郎。
独特な特徴と存在感。そして常人とは些か異なる能力を持つ彼。
しかし、夜雲は万事一切を即座に解決できる万能のヒーローではありません。
禁足地調査を生業とする彼は、怪異の発生原因を仮定し理路を組み、証言を集める。
怪談の伝播する機序を明らかにする。
そんな堅実な手法で事件に臨むのです。
本作は、ミステリーの構造をもつホラーとして読む者を惹きつける秀逸な物語です。
ぜひ、ご覧になってください。
また、ホラーというものの可能性が切り開かれたような感じがしました。
霊能者の夜雲を主人公とし、「幽霊絡みの超常的な事件」を追いかけるというストーリー。
夜雲は「禁足地となった学校の屋上」に潜む怪異の正体を探ろうと、学校の生徒たちから話を聞いていくことになります。
そして「学校の七不思議」などが紐解かれて行くことになりますが、その過程がまた面白い。
いわゆるモキュメンタリーのような手法で、「学校の怪談」が読まれて行くという手法。この感じがまた新鮮でした。
モキュメンタリーという手法を取ることにより、「学校の怪談」という素材が「現実に起こった事件」として解体されていき、思わぬ実像を浮き彫りにしていくことになります。
そうして「怪談はなぜ出現したのか」、「怪談が人々に与えている影響は何か」という様々な側面にスポットが当たって行く。
こんなの、面白いに決まってるだろ! と読み進めながら強く感じさせられました。
話が進めば進むほど、「学校の七不思議」という、誰がよく知っているものが、「現実に起こった謎の未解決事件」のように変換され、未知の何かに昇華されていく。
その過程がとにかく面白く、「禁足地となった屋上」とか「怪談がどうすると広まるか」などの現象が次々と出現する。
ホラーはまだまだ可能性があると読んで感じさせられました。誰もが知っている素材でも、スポットの当て方やカラーとしての描き方を変えることでまったく違う様相を見せてくれる。
ホラー好きにはたまらない、ホラーの可能性に満ちた作品です。