一万トンの宝物

きみどり

第1話

 「もう寝なさい」は、ジュリの嫌いな言葉だ。

 そう言われてしまったら、渋々ベッドにもぐり込み、嫌々リモコンで灯りを消し、部屋が真っ暗になったら、もうじっと目を閉じているしかない。


 でも、その日は違った。学習机の上が、ぼんやり赤く光っていたのだ。


 吸い寄せられるようにベッドから抜け出る。床に放ったらかしだったピンクのランドセルを蹴り飛ばしたけど、気にしない。

 光の元を探すと、それはすぐに見つかった。


「学校の帰り道で拾った石だ!」


 彼女の親指と人差し指の間には、小さな赤い石があった。ツヤツヤのスベスベで、少し尖った形をしている、宝石みたいな石だ。


 それをお椀の形にした両手の平にのせると、ぼんやり広がる光とは別に、煙のように立ち上る光があることに気づいた。


「なんなんだろう、この石……」


 なんだか普通じゃない。そう思って呟いてみた瞬間、立ち上っていた光がシュルシュルと渦を巻いた。そして犬か猫のような生き物の形になり、やがてふわっとほどけた。


「何、今の」


 思ったままに呟くと、また漂う光がひとまとまりになった。さっきと同じ生き物の形となり、その額では赤い光が瞬いている。しかも、今度のそれはまるで生きているかのように動き回った。


「……魔法の石だ!」


 ジュリは嬉しくなって、いつの間にか寝入ってしまうまで、ずっと赤い宝石を見ていた。

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