障害者じゃない?

島尾

ノンフィクション

 都心のタリーズでコーヒーを飲み終わったのち、スリザリオというゲームをやっていた。すると、若い女の声が聞こえた。内容は、「あの人一人でしゃべってる。障害者じゃない?」というもの。ここで、あの人一人でと言っていたかは正確に聞こえなかった。しかし障害者という言葉はよく聞こえた。また、私のことを言われたのではなさそうだとも思った。


 恵まれたやつらだと思う。だからこそ障害者を弱いもの扱いして楽しんでいるのだろう。しかし障害者は、私のここ7か月の経験に基づけば、私の20年来の苦しみを消す「能力」の持ち主だ。私は子供の頃から無言になりがちで、大人になってもそれが続き、かなり不愉快で不幸な日々を過ごしてきた。しかし、とある2名の障害者がたった3か月で私の状態を変えた。よって私は障害者に高次元の積極的な可能性が秘められていると思っている。だが先の女らはそれを知らないようだ。彼女たちは障害者を単なる先入観で語っていた。そして死ぬまでそれに気づかないか、もし気づいたら自分が何を言ったのか後悔するだろう。


 健常者が障害者と日常的に関わる社会が来るのか来ないのか、知るよしもない。他方、障害者と関わることは多くの健常者にとって有意義だと思う。なぜそうなのか、と問う人は、実際関わってみれば分かる。言語で語り尽くせるようなタイプのものではない。そこには、正当な論理構築を破壊することで初めて成り立つ関係性さえ存在するのだ。


 その女らの顔をチラ見した。その後、心の中で少し笑い、再びスリザリオを始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

障害者じゃない? 島尾 @shimaoshimao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ