「教室にスマホを取りに帰っただけなのに!!」

アルパカ狂信者

『教室にスマホを取りに帰っただけなのに!』

「あ、ヤベッ。忘れ物したから教室に取りに帰るわ。先、帰っててくれ」

「分かったー。じゃ、先に帰ってるわー。あ。因みに、何忘れたん?」

「うーんと、スマホと後、折り畳み傘」

「あーね。御愁傷様とだけ、言っとくわ。また明日ー」

「んー。また明日」

そう言って、親友の田中に別れを告げて教室に戻った時の事だった。

「あっ?こんな時間に誰か居るのか?」

恐る恐る教室の扉を開けると、何やら、声がした。

「ふんぬぅぅぅ〜〜〜〜〜〜!!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

見れば、俺のスマホと折り畳み傘を天に掲げ、何やら空手の様な、ヨガの様な、珍妙なポーズを取る少年(?)がいた。

「……何、してるの?ていうか、ソレ俺のスマホと折り畳み傘じゃん!」

「うわぁぁぁぁぁ?!この時間は誰もいない筈なのに……?!なんで?!誰?!」

そう言いつつ、ズズイッと、一気に距離を詰められる。

「いや、それ、こっちのセリフなんだけど……。というか、俺は普通にスマホと折り畳み傘取りに来ただけで……」

「ほうほう、成程成程。少年はスマホと折り畳み傘を取りに来た、と」

「う、うん。で、何してたの。後、スマホと傘、返して」

「ボクかい?ボクはねぇ、君のスマホを依代よりしろに妖精を召喚しようとしていたのさ。あと、ボクの名前はジュンさ」

「は、はぁ……。えーと、それって、もしかしなくても痛いヤツ?『俺の右目が疼く』的な?」

「あっ、違うよー。魔法だよ、魔法!」

「……はぁ?やっぱ、痛いヤツじゃん……!」

「だーかーらー、違うって!少年も、レッツ・プレイング!召喚しましょう?!そうしましょう?!」

「えっ。そ、そんな事、言ったって、オレはどうしたら……?」

「念じるの!!手をこう前に突き出して、念じるの!せーの‼︎」

「ええい!しゃなーい!!」

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

二人の声が重なり、『シャラララーン』という音と共に、光が現れもくもくと、煙が湧いて、目の前が見えなくなった。

「なっ、なんだ?!光と煙で、前が見えなく……!」

「まさか……!召喚に成功した?!」


もくもく、とした煙の中から、現れたのはーーーーーー。


「Hey!Hey!Hey!オレ様を呼んだのは君達かぁーーーい?」


ゴテゴテの光るサングラスに、白いファーを首に巻き、ドギツめのピンクと紫のゴテゴテの服を着た世紀末のヤンキーみたいなヤツだった。


「「いや、誰?!」」

「オレ様かぁーーーい?みんなぁー、大好き!萌え萌えきゅーーーん!妖精たんでぇぇすぅーー!!」

「えっ?妖精さんって、こんななの?!てか、ただのヤバい人じゃん!いや、この場合、妖精か!」

「少年。妖精とは非日常であり、非現実な存在なんだ……。だから、コイツは妖精で……。うん、そう、この男は妖精だからこそ、非日常であり非現実な存在なんだ……。後なんで、あんな世紀末のヤンキーみたいな格好してて、あんなにイケボなんだよ……」

「うん、ジュン。お前が動揺してるのは、分かったから一旦落ち着け……。後、イケボなのはスゲー分かる」

「うんうん、二人とも、イケボなの褒めてくれてありがと!オレ様ポイント10ポイント、献上し・ち・ゃ・う!」

「イケボの自覚は有ったんだ……」

「後、今は令和だからね。妖精さんも、イメチェンするのさ〜」

「いや……。にしても、イメチェンしすぎじゃない?!」

「いや〜。そぇ・れぇ・ほぉ・どぉ・でぇ・もォッ〜。照れちゃうわぁっ〜」

「いや、褒めてないよ?褒めてないからね?後、めっちゃイケボですね⁈」

「や〜ん、良い子。オレ様ポイント、10ポイント贈呈しちゃう!!」

「……う。やっぱり、……うよ、こんなの」

「……え?ブツブツ言い出して、どうした?」

「妖精はもっと、純朴で狡賢く、在るべきなんだ!あんなの、違う!じゃない!」

「いや、ジュン!色々と主張が矛盾してるけど、大丈夫?!」

「え〜。そんなこと言われても……。でも、そうねぇ。魔法を見せてあげるわ!そうしたら、信じてくれるかしら……?」

「え?ホント⁈妖精さん!魔法みせてくれるの?やった!」

「いや、ジュン。それで納得するのかよ……」

「ええ。任せなさいな〜。行くわよ」

そう言って、妖精は手を宙にかざしつつ、詠唱を開始する。


漆黒が渦巻く中で、頂点に立つ者よーーーーーー。我が今、命じよう。

今、我の手に依って封が解かれん刻、漆黒の闇の中を彷徨う我に、

生命の息吹を、その声を、響かせ給え。

その御霊みたまを今、大地に顕現させ、我の前に降臨し給え。


詠唱が終わり、暫しの沈黙がその場を襲う。


「あのー。特に、何も起きないんですけど……」

「違うよ!少年、外だ!!」

そう言って、ジュンは教室の窓から、外を指差す。急いで窓の近くに駆け寄る。そこにあったものはーーーーーー。

「なんだ、アレは?!」

「雨が……?!」

外に視線を移せば、雨がんで黒い雨雲が途端に晴れていく。そして、雨雲が消え、夕暮れの太陽が空に顔を覗かせる。そこに存在したモノはーーーーーー。いや、そこに存在した生き物はーーーーーー。


めちゃくちゃにデカいトリだった。


「カクヨムノ公式キャラクター!!皆ノ癒シ、トリ、降臨ーーーーーーー!」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっ?!なんか、喋ってるぅぅぅぅぅぅ?!」

「ねぇ、少年。これって……

ジュンがこちらを見つつ、話しかけてくる。

「何。あ、ちょっと、待って……。ジュン。俺、めっちゃ分かっちゃったかも……。いや、でも、そんな……!」

「そう、ジュン君、少年。その、さ!」

「“トリ”だけに、“トリ”を飾ろうって……?だから、妖精さんは……トリを召喚して……」

「まさか、それだけの為に、あのでっかいトリ呼んだの?!」

「うん!大正解!オレ様ポイント1兆点あげちゃう!トリちゃん、最後、ドッカーンとやっちゃって!!」

「リョウカイ、ダヨ」

「「えー。しょうもn……」」

「二人共、ソレハ言ワナイ、オ約束、ダヨ。爆破・スイッチON」

「えっ。鳥が喋ったぁぁぁぁぁぁぁ?!ああああっっっっっっっ!!んな、アホなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!後、ジュン。俺のスマホ返して!!」

「ごめん。召喚に使っちゃって、無くなっちゃった……」

「まぁ、親に新しく買って貰おうと思ってたから、良いけどさぁー」

「ねぇ……。少年」

「なにー?ジュン」

「トリさんさ、爆破スイッチONって言ってなかった……?」

「えっ。いやいや、流石に冗談だよな……?」

「少年達、冗談では無いわよ!!爆発は芸術なんだから!!」

「なぁー、ジュン。これ、事実だとしたら結構やばくねぇ……?」

「あれ、もしかしなくても、ボク、割とヤバい妖精さん呼んじゃった……?」


少年達がそんな会話をするよそで、”妖精さん”は笑いながら叫ぶ。

「ふふっ!芸術という名の爆発聖なる浄化の始まり!嗚呼、なんて綺麗なんだろう……!」

夕日が降り注ぐ中、爆発音と共に二人(+1匹)の悲鳴が響き渡る。そして、××××年6月13日、”妖精さん”が召喚した、謎の生命体”トリ”が起こした爆発によって人類は滅亡した……。


「少年達、ありがとうね。俺様のこと、起こしてくれて……!俺様ポイント1兆点とあげちゃうよ。……って、もう少年達には、聞こえてないかー。にしても、あっけなかったねぇ……人類」

ふと、見上げれば夜空には月が浮かんでいた。

「人類、滅ぼしちゃった……!ま、いっかー!」


この後、人類が滅亡した世界で、”妖精さん”のお気楽な旅は続くのだが、それはまた、別のお話であるーーーーーー。

                     

                        ーーー THE END ーーー

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「教室にスマホを取りに帰っただけなのに!!」 アルパカ狂信者 @arupaka-kyosinzya

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